紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

研究関連

2023年のお仕事

2023年もあとわずかとなった。今年は大学教員として完走した最初の年ということもあり、1年の間に行った仕事についてまとめたいと思い立った。年中何か思い立っていれば毎日が吉日なので、チョロいもんである。これがライフハックというやつに違いない。 学…

海外出版局の編集者と会う

現在の勤務先に着任してから1年余りが経ち、この大学が持っているリソースが世界とも戦えるなと思う部分と、これが自称世界レベルとは・・・と思ってしまう部分の両方が垣間見える出来事がそれなりにあったが、個人的に前者の代表格ともいえるのが、社会科学…

索引作成者という仕事

どうも忙しくて前回の記事から時間が空いてしまった。忙しいといっても、別に夜中や土日まで仕事をしているわけではないし、日々7-8時間は寝て友達と飲みに行ったり趣味をする時間はあるのだが、何か気忙しいというか、時間が足りない感じがするのだ。 授業…

学会づくしの3月

「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る」とよく言うが、と言おうと思っていたのだが、最近Twitterで、これは主に西日本で言われていることで、東日本では聞いたことがない人も多いという投稿があって、びっくりした。東日本では1-3月が過ぎる速度は遅いの…

捨てる神(×7)あれば拾う神あり:論文出版こぼれ話③(CP)

「1月は行く」などとその過ぎる早さを指して言われるが、2023年の1月は私にとってはかなり長かった。正月早々、実家から帰京しようと思った矢先に母親のコロナ感染が発覚して滞在を延長し、ようやく東京に戻ってきたと思ったら今度は手足口病のような発疹が…

ゾウの時間、査読の時間:論文出版こぼれ話②(EJIR)

先月頭にEuropean Journal of International Relationsという雑誌に、新しい論文が掲載された。私は博士課程まで、「天然資源が主権国家の独立過程に与えた影響」というテーマを研究していて、事例としては東南アジアのブルネイ、中東のカタールやバーレーン…

政治学ポスドク就活体験記③:オックスブリッジの特殊システム

前回の記事はこちら Junior Research Fellowとは 前回の記事で、オックスフォードとケンブリッジは独自のポスドクの制度を持っている、という話をちらっと書いたが、今回はそれについて説明したい。オックスフォードとケンブリッジ(+ダラム)は、「カレッ…

政治学ポスドク就活体験記②:「ポットラック」としての英国ポスドク市場

前回の記事はこちら コロナとジョブマーケット 新型コロナの流行が、中国やその周辺国の地域的な問題から、グローバルな危機へと変化したのは、2020年3月頃であった。このパンデミックの影響というのは各所に及んでいて、思わぬ形で私にも影響を及ぼすことに…

政治学ポスドク就活体験記①:ポスドクの位置づけ

このブログを始めてもう4年近くになるが、そもそもの開設動機は、政治学の分野で海外PhDに出願するための情報を提供するためであった。その後色々と愚にもつかない記事を書き続けてはや4年が経ったわけだが、そんな私もこの3月に博士号を取得し、長い院生生…

博士号の取得、あるいは長旅の終わり

このブログの読者はほとんどが私のTwitterを見ている人だと思うので、既に知ってい(て「またかよ」と思ってい)ると思うのだが、一応「本拠地」であるこちらでも博士号取得の報告をしておこうと思う。 以前のポストで書いた通り、博士論文を提出したのは今…

夜研究をしないということ

夕食後は一切研究をしないようになって、そろそろ2年が経つ。 多くの院生と同様、もともと私は昼夜の別なく、勉強や研究をやってしまう性質だった。考えてみれば中学受験の塾からして、学校が終わった後に始まり、夕食を挟んで夜まで授業が行われていたのだ…

博士論文提出!

表題の通りである。ついについに、博士論文を提出した(といってももう2週間前)。80,821語、日本語にして、だいたい16~20万字くらいなものだろうか。ダブルスペースで約300ページ。書き上げて、手放した。 12月中に全体のドラフトはできており、あとは指導…

博論執筆中の息抜き

数日前、ついに博論の終章のドラフトを書き終わった。それ以外の章は11月の頭に書き終わっていて、その後は他の章の修正をひたすらやっていたのだが、12月に入ってからついに結論に取り掛かり、ようやく書き上がったわけである。どの章を書くのも大変だが、…

中間審査に合格/ジョブマーケット近づく

9月になった。8月中旬に日本を出てこちらに戻ってきたのだが、イギリスというか欧州はもうだいぶ気温も下がってきて、最高気温は20℃前後になっている。朝晩は長袖シャツにカーディガンやセーターを羽織ってちょうどいい、といった気候だ。ヨーロッパの夏は日…

論文が初引用された!

研究者というのは、研究の成果として論文や著書を発表する生き物だが、その出した成果が他の研究者などから参照されることに喜びを見出す生き物でもある。自分の研究が誰かの「参考文献」となることは、端的に言って嬉しい。 先日、Google Scholarから一通の…

論文をオープンアクセスにする

ブログを1ヶ月近くも放置してしまった。帰国してホテルで自主隔離をして以降は、ずっと実家で研究をしている。ヨーロッパの緊迫した状況に比べると、日本は緊急事態宣言が出てもまだまだ牧歌的で、それが逆に恐ろしいくらいだ。なので感染の可能性やロックダ…

非専門家でも読みやすい、国際情勢関連の英文ジャーナル

かつて日本の法学部や法学政治学研究科に所属していた頃、所属を明かすと「弁護士になるの?」と聞かれた。いや、私は法学じゃなくて政治学をやっているんですと言うと、「じゃあ政治家になるんだ?」と続く。政治学者に政治家になりたいかを聞くのは、ミジ…

一次資料面白発言集:湾岸編②

前回の記事はこちら さて前回は、私が読んでいる一次資料から、イギリス植民地官僚や湾岸の現地政治家の面白発言をご紹介したが、今回はその第二弾ということで、新たに6つのエピソードをご紹介する。では早速見ていこう。 ⑤盗人のパキスタン人と、 安心と信…

一次資料面白発言集:湾岸編①

今週をもって、今年度の第一学期が終了した。わずか8週間という短い学期だが、結構盛り沢山な学期だったように思う。長らく取り組んできた研究がようやく出版されたり、初めてのティーチングを経験したり、就職活動まであと1年を切ったことに気づいて焦りだ…

競争と洗礼:論文出版こぼれ話①(Democratization)

10月13日付で、初の英語査読論文が出版された*1。修士論文の問題意識を元に、大幅に修正しつつ書き上げたもので、博士論文との関係で言えば、関連テーマの「スピンオフ」という感じになるだろうか。投稿を開始してから2年弱が経ってやっとアクセプトされた、…

オックスフォードにおけるティーチング

新学期が始まって、1週間が過ぎた。と書くと、「1週間しか過ぎていないのか」と思われる方がいるだろうが、そうなのである。オックスフォードでは、3つの学期をMichaelmas、Hilary、Trinityと呼び慣わしているのだが、Michaelmasは10月~12月、Hilaryは1月~…

文献の4つの読み方:勉強、探索、引用、沈潜

1年少々前に、文献ノートの取り方について記事を書いたが、それなりに反響があり、このブログの中では比較的よく読まれている記事の1つになっている。やはり、自分のプロフィールから考えると、沢山書いているふざけた記事や身辺雑記的な記事よりも、こうい…

Ph.D2年目の終わり

今年度はあまりオックスフォードにいなかったので大して実感がなかったのだが、気づけばPh.D生活も2年目が終わりを迎えている。本当に「気づけば」という感じで、一時帰国して知り合いに会う度に、「もう2年経ったの?」と驚かれる。自分でも驚く。つい最近…

意欲的な学部生のためのアウトプット媒体―懸賞論文という選択肢

研究者の最も重要な仕事は、研究成果を論文や本の形で出版することだろう。どの学問分野にも実に様々な雑誌が存在して、各国の研究者がその研究成果を発表している。研究者志望だと言うと、よく「勉強が好きなんですね」という、恐らく悪気のない、しかしあ…

海外院生が応募できる国内研究助成リスト

研究にはお金が必要である。実験器具とか設備を揃えなければいけない自然科学系の人たちはもちろん、社会科学にも実験をする人はいるし、フィールドワークをする人もいる。また研究を国内外の学会で発表する際には、その交通費旅費なども必要だ。近年は論文…

IQMRサマースクール 第2週

前回の記事はこちら 先週から参加していた、アメリカ・シラキュース大学で開催されているInstitute for Qualitative and Multimethod Research (IQMR) の2週目が終わったので今週の感想をまとめておきたいと思う。プログラムは2週間なので、今週金曜日で全日…

IQMRサマースクール 第1週

今週月曜日から、Institute for Qualitative and Multimethod Research (IQMR) という政治学方法論のサマースクールに参加している。政治学方法論のサマースクールとしては、ミシガン大学で開催されるICPSRが最も有名で規模も大きいと思われるが、量的方法論…

Ph.D1年目の終わり

先週の金曜日に博論のプロポーザル、というかイントロダクションと1章分のドラフトを提出して、Ph.D1年目が無事終わった。オックスフォードでは、DPhil(Ph.Dの呼び方)は3段階に分けられていて、第1段階がTransfer of Status、これはいわゆるプロポーザルの…

研究発表にコメントするのは難しい

オックスフォードというところは、とにかく毎日随所で大量のセミナーが開催されており、興味があるものに全部行こうとすると生活が回らなくなる。私は今年は少々セーブしすぎた感があり、それほど多くに行ったわけではないが、それでも学部で開催されるもの…

オックスフォード国際関係論Ph.Dの就職状況

研究者を目指して博士課程に所属している、あるいはこれから大学院を選ぼうと考えている人ならば、その大学院を出た先にどのような未来が待っているのかを考えるのは自然なことだろう。自分のプログラムの出身者が、研究大学に良いポストを得ているのか、ど…