紅茶の味噌煮込み

オックスフォード留学記

巻頭言

ブログを作るのはあっけないほど簡単だが、ブログを続けるのは驚くほど難しい。
書く時間がないわけではない。むしろ、時間があるがゆえに書けない。
博士課程院生にとって、毎日は休日であり、平日である。すべての可処分時間は本来研究に割かれるべき、という(良くない)プレッシャーが常にある一方で、それを押し切ってまで休んでいる時間は、純粋に休みだと思えることをしたいのが人情だ。

そこに来てブログを書くという行為は、普段文章を書くのが仕事の人間にとってあまり気分転換にはならないし、一方でブログのような、研究ではなく、自分のためにも人のためにもなっているんだかわからないことをしていると、「その時間を研究に回すべきではないか」という内なる問いかけにさらされる。

また、類似の媒体として日記があるが、日記は基本的に自分しか読まないことを前提に書かれるため、かなりプライベートなことまで将来の自分が懐かしむことも考えて書けるが、人が読み得るブログにはあまりそういった個人的なことは書けない。(だからといって日記が継続しやすいということはなく、現に私の「5年日記」は今年最終年であるにも関わらず合計1年分も埋まっていない。)

誰かに参照をされるようになれば張り合いも出て執筆も進むのだろうが、そもそも参照されるようなブログは書き続けられているブログである。鶏が先か卵が先か。誰も読んではいないだろうが書き続けなければいけない、というこの「静止摩擦」状態を脱することができるかどうかが、ブログの継続にとって重要なのではないだろうか。

既に2回も自分のブログを自然消滅に追い詰めた実績を誇る私が、3度目の正直を狙ってこのブログを開設するに至ったのは、元々大学院留学の出願をする中で、出願や博士課程の留学生活の情報が少ない、あるいは古いということに気づき、自分の記録を残すことで今後留学する方の参考にほんの少しでもなれば、と思っためであった。しかしそれからぐだぐだとかれこれ半年以上も執筆を先延ばしにしている。

それでもついに今日超重量級の腰を上げて執筆に踏み切ったのは、資料収集先のブルネイの空港で、3時間もすることがないままソファに座って読んでいた小説を読み終わり、スマートフォンの電池残量がどんどんと減っていく中で、残りの1時間をどう過ごすかと考えた時に、ふとパソコンの電池はまだ残っており、空港に無料のWifiが存在することに思い至ったからである。
しかし、結局搭乗時間までには記事を書き終えることはできず、現在シンガポールのホテルと空港で夜遅くのフライトを待ちながら(夜にフライトを設定したのは完全なミスであった)続きを書く羽目になっている。

仮にこのブログが静止摩擦状態を脱して継続されるとするならば、それは大学院出願の記録に始まり、留学生活の記録に移行し、日々の雑感を含みつつ、博士号取得と同時に何らかの終わりを迎えるであろう。無論以上はあくまで仮定上の話であり、このポストを最後に一切の更新が途絶える可能性を否定するものではない。

私は、紅茶を味噌で煮込まなければならないほどの精神的恐慌を来したこともない、標準的な大学院生である(と思っている)。このブログは、暇を持て余した(もっともこの一見暇と見える時間が、本来研究に捧げられるべきだとする無言のプレッシャーが常にかかっていることは注記しなければならない)大学院生が、日常のどうでもいいことについて普段巡らせている思考の一端を、ひっそりと書き綴る手帳である。