前回の記事はこちら
penguinist-efendi.hatenablog.com
前回は出願に必要な諸々の書類をまとめて概括したが、今回は出願までの最後の関門、指導教員候補とのコンタクトと訪問について書きたい。
- コンタクトは必要か?
まず、最初に述べておかなくてはならないことは、アメリカの博士課程では指導教員候補と連絡を取ることは必要ではない一方*1、イギリスの博士課程では、これが合否を左右する最大の要因の一つであるということだ。
以前の記事(http://penguinist-efendi.hatenablog.com/entry/2017/08/01/223000)で英米の博士課程の根本的な違いについて説明したが、アメリカでは「指導教員」というのは合格時には決まっていないし、入学後もしばらくは決まらず、決まって以後も集団指導体制である。一方イギリスでは、一人の指導教員に付くことになり、指導教員と院生の関係は、両者にとって非常に重いものになる(日本でもそうだが)。
そのため、合否の判断もその指導教員が、自ら責任を持ってその院生を引き受けたいかどうかという点に強く依存するのである。なので、相手に自分を受け入れるべきだと納得させる必要があり、向こうも会って判断したいと思っている。会った結果、能力は十分に見えても、研究関心が一致しなかったり、性格が合わなそうだと思われたりすれば落とされる可能性は十分あるし、また長い付き合いになるわけだから、自分の側としても指導教員と上手くやっていけそうか、そして向こうに受け入れ意思はありそうか見極めておく必要がある。といっても、出願時点でうまくいきそうだと思っても、実際そうなるとは必ずしも言えないわけだが、でもリスクをゼロにすることはできないので、ある程度考えたら後は身を任せるしかない。
- メールを送る
まずは指導教員候補にメールを送るところからだろう。向こうは忙しいので、あまり早い時期にメールが来すぎても、何で今頃送ってくるのだと思われて無視されるかもしれないし、やたらと長文で分かりにくいメールを書いても読んでくれないかもしれない。逆に情報が不足していても読んでもらえない可能性がある。要するに、必要な情報を簡潔に伝える必要があるわけだ。
必要な情報とは、①自己紹介(名前と所属など)、②進学の意思、③相手の研究への関心と相手に指導してもらいたいと思っていること、④自分の研究テーマ、である。①と④はメール本文でも少しだけ触れるが、①はCV、④は研究計画書のドラフトを添付することで詳しく伝える。
例えば私がオックスフォードの指導教員に対して最初に送ったメールはこんな感じだった。なお、その先生に対するコネなどは全くなく、誰の紹介も受けていない。
Dear Professor ----,
I am ---, an MPhil student at (所属). I am thinking of pursuing my Ph.D in the U.K., and Oxford is my first choice.
My main interest lies in (研究関心を短く). (Details can be found in my research proposal, which I attach to this e-mail.)
In the process of my MPhil research, I encountered your works, including your book, ----. (興味を持った点と自分のプロジェクトとの関連)
Could I ask you if you plan to supervise new Ph.D students?
Also, if I visit Oxford this winter, could you meet me and discuss my research and application with me?I attach my CV as well. If you need any additional information, please let me know.
Thank you very much for reading this through. I am looking forward to hearing from you.Sincerely,
-----.
送った当初は本当に返事をくれるのか半信半疑だった(というか十中八九無視されると思っていた)のだが、意外にもその日に返事が来た。これは併願していたLSEの先生も同様であった。それだけ、進学希望者がメールをするのは当たり前だということだろう。
- 訪問する
返事が来たら、実際に会って話す日時を相談しよう。Skypeで済ませてももちろん良いのだが、やはり実際に行ってその人の雰囲気や、大学の環境なども含めて視察に行った方が得られるものは大きいだろう。私の場合も、それまでアメリカを中心に考えていたのが、 オックスフォードを訪問したことで急にそちらに心が向き出したという経緯がある。もっとも、そこは懐事情との相談でもあるので、必要経費と割り切ることができなければ、Skypeをお願いしても留学生の場合問題はないと思う。ただ、私の周りでは実際に会いに行ったという人が多かった。
複数校出願する場合は、まとめて訪問すればいいし、他の大学にも出願しているということを伝えても全く問題ない。私が話したLSEとオックスフォードの先生は互いに知り合いであったし、むしろ、うちで合格できるとは限らないから他も出しとくべきだよ、と言っていた。受け入れる、とその場で言ってくれないのは残念ではあるが、それができないのも当然なので、せめてオープンに他も受けるようにと言ってくれるのはありがたく思った。
そして会った結果、私はオックスフォードの先生の方により惹かれた。私が会ったLSEとオックスフォードの2人の先生は、結構タイプが違い、両者とも私の研究テーマを面白いと言ってくれていたが、前者はメールでも対面でも結構細かく鋭いコメントをくれた(そして非常に参考になった)のに対し、後者は全体的な印象とおすすめの関連文献などを教えてくれた。どちらも面談時間は30分程度だったが、前者はこちらが質問しないと黙っているが聞いたら色々答えてくれる感じで、後者は向こうから色々と聞いてくれた。あと、本質的ではないが印象深かったのは、LSEの先生がガラス張りのなかなか無機質な部屋で殺風景な研究室にいたのに対し、オックスフォードの先生はいかにもオックスフォード然とした良い雰囲気の研究室を持っていたことであった。まあこういうところで比べるのはちょっと酷なのだが…
研究室はともかく、指導スタイルについては好き嫌いがあるので、どちらがいいとは言えない。細かいコメントを貰えるほうが良いだという人もいるだろう。ただ、私は色々細かくこうしろと言われるのがあまり好きではなく(それは欠点かも知れないが)、大まかな論旨についてコメントしてもらいたい方であり、また指導教員に何よりも求めるのは、コメントというよりも自分を肯定してバックアップしてくれる「ボス」的な存在なので、オックスフォードの先生の方が合う気がしたのである。というようなことも、訪問すれば(あるいはSkypeでも)分かるわけだ。