紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

英米政治学Ph.D出願の記録 番外編①:英語のチェックについて

英米の大学院に出願をするためには、以前の記事で概観したような様々な出願書類を、英語で作成しなければならない。そこで非ネイティブに必ずつきまとう不安は、自分が正しい英語を書けているかというものである。いくら英語が得意でも、数字で勝負しない社会科学系("social scientists who..." であり、"social scientists, who..." ではない)の場合、どうしても文章表現がネイティブよりは稚拙であったり、生硬であったりするものだ。母国語なら文章が綺麗に書けているか、美しいかというのは感覚としてわかるものだが、外国語だとそうはいかない。

特にSOPやライティング・サンプル、研究計画書といった長い文章を書く際には、英文校正をどうするかという問題が出てくる。周りを見ていると、簡単な文法チェックだけで済ませる人、友達に頼む人、そして業者に出す人がいる。どれが正解というわけではないが、私は業者に出した。

まず、自分でちょっとチェックしただけで済ませるのはできるだけやめた方がいいと思う。細かいミスは自分では気づきにくい面もあるし、文章の流れや単語の選択など、ネイティブでないと分からない点もある。人生一度(か二度ぐらい)の機会だし、その結果が将来に大きな影響を及ぼすのだから、そんなところで遅れを取るのはバカらしいと私は思う。日本語に置き換えてみればわかるが、助詞がおかしかったり、言葉の繋がりが変だったりする文章を読むのは意外にストレスフルだし、無意識に書いた人の知性を少し割り引いて考えてしまったりするものである。内容が重要なのは言うまでもないが、言葉もかなり重要である。

信頼できるネイティブの友達がいれば、そういう人に頼むのもいいだろう。ただ、ちょっと気が引けるし、専門分野が同じでなければ、用語を知らないため上手く直せない場合もある。政治学専門の私が、日本語で物理学の論文を添削してくれと言われても無理なのと同様、英語ネイティブだからといって私達が書く高度に専門的な文章を添削できる保証はまったくない。

業者に出すのはお金がかかるが、お金がかかるがゆえに丁寧に見てもらえる場合が多い。そして出来上がりまでの日数も予め決まっている。友達だと、締切が迫っているが頼んでいる側なので催促できない…などということが生じうるが、業者ならそんなことはないだろう。英文校正業者はたくさんあるので、どこを選ぶかは迷うが、ネット上の評判などを見て適当に選べばそこまで差はないと思われる。私もこれまで数社使ったが、質や料金には大きな差はなかった。激しい競争の中でかなりサービスが均質化している印象がある。

ただ、注意して頂きたいのは、日本の校正会社ではなく英米の校正会社に出すべき、ということだ。両者は価格がぜんぜん違う。日本の会社は、確かに日本人が犯しがちなミスに明るいのかもしれないが、値段が目が飛び出るほど高い。例えば日本語でGoogle検索して一番最初に出てきたエナゴ(https://www.enago.jp/)は1語6円、私が実際に使用したことのあるProofreading Service UK(https://proofreadingservice.org.uk/proofreading-rates-prices)は1語約0.011ポンド(1円あまり)である。5000語の文書なら前者は3万円かかるのに対し、後者は50ポンド程度(7500円ぐらい)と、圧倒的な差が出る。国内の会社と海外の会社では、競争にさらされる度合いが違うのだろうか。どの会社もきちんと学位を持った専門的なことを理解できる校正者を雇っていると銘打っているが、日本の会社が確保できるそうした人材が沢山いるとは思えないので、コストが高くつくのだろうか。

もっとも、業者だからといって校正の質にそれほど期待しすぎるのは考えものだ。大抵の(英米の)校正業者は、ProofreadingとEditingという2つの種類のサービスを提供しており、前者は単に文法ミスなどを修正する最低限のもの、後者は単語の選択や文章の流れなども見てくれるより発展的なサービスだが、両者とも元の文章を前提に間違いを正していくものであり、文章が見違えるほど美しくなるようなことはほとんどない。元の文章を完全に変えてしまうようなことをすると、業者の側としてもリスキーである。「全然意味が違うじゃないか」というクレームをされると困るだろう。英文校正業者については、自分も現在色々と試している最中なので、ここが良いというのがあればまた取り上げたいと思う。

最後に、どうしても自分でなんとかしたい、という人には、Grammarlyという校正ツールをおすすめする。このソフト(あるいはウェブサイト)文章を入力orアップロードorコピペすると、自動的に文法ミスを指摘してくれる。精度もかなり高い。有料プランに申し込めば、完全な間違いだけではなく、間違いではないが少し変だという点の指摘もしてくれるようになる。

www.grammarly.com