紅茶の味噌煮込み

オックスフォード留学記

銃・病原菌・桐灰

望むと望まざるとに関わらず、関西出身者が東京に出るということには様々な結果が伴う。「方言残ってるね」と言う関東人に、関西弁は方言ではないという当然の事実を理解させなければならないし、全ての関西人がお笑い芸人ではないという彼らにとって驚きの新事実を発表してやらねばならないし、全般的な味付けは濃いのにコンビニのおでんだけはなぜか薄味という矛盾にも耐えなければならない。大阪出身者はさらに、ことさらに京都を持ち上げその対比として大阪を馬鹿にする関東人の前近代的な幻想を修正し、京都弁なるものを操る高貴な京都人などという人種は物語の中にしかいないことを納得させる必要にも迫られる。そうやって苦労して現地人の生活に適応すると、今度は関西にいる係累に関西弁が変になっただの、お前は東京に魂を売っただの、通天閣にも上っていないのに東京タワーに行きやがってだの、綾小路きみまろって誰だだの言われることになる。

大阪に生まれ大学進学を機に東京に出て6年半、私もこうした行き違いを何度も経験してきた。「アホか」といっては傷つかれ、「バカじゃないの」と言われてはむっとし、「それいらんからほっといて」と言っては放っておかれ、「それ使わんからなおしといて」と言っては「故障してるの?」と聞かれ、「片しときますね」と言われては「肩がどうした?」と尋ね、「ほぼほぼ」という言葉に強烈な違和感を覚えてきた。ほぼは一個でも二個でもほぼであり、従ってほぼの2個目以降の限界効用はゼロである。

とまあこういったこと極めて有意義なことを普段から極めて論理的かつ理性的に分析しているわけだが、先日Facebookを眺めていてある人(関東人)の投稿にこんな言葉を見つけた。

「ホッカイロつけてたんだけど寒かった!」

ホッカイロって何だ??

いや、正確に言えばホッカイロというものが存在しているのは知っている。しかし特定の商品名であるカイロの代名詞のようにそれを使用することはないし(クロネコヤマトの商標である宅急便を一般名詞である「宅配便」の代わりに使うという宅急便方式)、そもそもホッカイロなるものを人生で使用したことがない。なぜわざわざホッカイロをつけていたことをこの人は強調するのだろうか。ホッカイロの回し者か?サブリミナル効果狙いか?などと疑われて警察に職務質問を受けても文句は言えまい。

こういう風に言うと、関東の方々はこう思うかもしれない。

「ああ、この人はホカロンを使うのね。」

ホカロンって何だ??

いや、正確に言えばホカロンというものが存在しているのは知っている。しかし特定の商品名であるカイロの代名詞のようにそれを使用することはないし(クロネコヤマトの商標である宅急便を一般名詞である「宅配便」の代わりに使うという宅急便方式)、そもそもホカロンなるものを人生で使用したことがない。なぜわざわざホカロンをつけていたことをこの人は強調するのだろうか。ホカロンの回し者か?サブリミナル効果狙いか?などと疑われて警察に職務質問を受けても文句は言えまい。

ではホッカイロもホカロンも使わない関西人は何を使うのかというと、桐灰のカイロである。これかこれ。

http://www.kiribai.co.jp/img/brand/har1609_top.jpg

http://www.kiribai.co.jp/img/brand/nhw1609_top.jpg

桐灰というのは会社の名前で、後者の商品名はどうやらNew Hand Warmerというらしいが、そんな名前は誰も知らない。知っているのは「桐灰」という名前と、貼るのか貼らないのかという二択だけ。現に前者は商品名も「桐灰はる」のようだ。潔い。

桐灰とホッカイロやらホカロンやらの性能がどっちが良いとかそんなことは知らないし私が考えることでもない。別にどっちが良いとかいう話をしたいわけではないのだ。どちらも鉄であることだけは確かである。要するに言いたいのは・・・いや特に言いたいこともない。東京一極集中が問題となり、グローバル化が進行する今日においても、カイロにおいてさえも天下統一は成し遂げられておらず、地域間の差異がこんなにも残っているというのは面白い。 そういえばこの前飛行機で読んだ椎名誠のエッセイにも、東西の文化的断絶がどうのこうのと面白おかしく書いてあった。

いっぽん海まっぷたつ (角川文庫)

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それを踏まえずに東京スタンダードを当然として関西に迂闊に立ち入ると、全身に「桐灰はる」を貼られて葬られても仕方ないのであり、もしかすると逆に、関西人が銃と病原菌と桐灰によって関東を征服する日が来るかもしれないのである。

何でこんな話をそもそもしたのかというと、オックスフォードは寒いからカイロを持っていこうと思い立ったのと、最近スターウォーズの最新作を観たからである。これでこの雑な記事は終わりである。