紅茶の味噌煮込み

オックスフォード留学記

海外院生が応募できる国内研究助成リスト

研究にはお金が必要である。実験器具とか設備を揃えなければいけない自然科学系の人たちはもちろん、社会科学にも実験をする人はいるし、フィールドワークをする人もいる。また研究を国内外の学会で発表する際には、その交通費旅費なども必要だ。近年は論文はほとんど大学の図書館からオンラインでアクセスできるにしても、本や資料は買わなければいけないことも多い。

しかし博士課程の院生というのは、教員と同じような水準の研究をすることを求められる割に、金銭的には劣位にあるというか、学振を受給している場合を除いて科研費にも応募できないし、民間の研究助成も対象外である場合も多い。

海外大学に所属している院生の場合は、それに加えて、日本に居住していない、あるいは日本の大学院に在学していないということがさらにネックになる。多くの財団が居住要件あるいは在学要件を設定しているためだ。もちろん、留学組の場合は、逆に留学先の大学やその国の財団から助成を獲得できる場合がある。有力大学なら、院生のための研究助成を一定額用意していることが多いだろうし、研究に対する民間の助成はヨーロッパやアメリカの方が盛んである印象がある(実際統計が手元にあるわけではないので分からないが)。しかし、相当な金満大学でない限り、院生1人あたりに数十万円をポンと出してくれることはないだろうし、現地の民間の助成は、その国の出身者を対象としている場合も多く、留学生が必ずしもアクセスできるわけではない。自然科学系なら、ラボの「ボス」が資金を獲得してきて、それを使えるので別に自分で研究費を得る必要はない、という場合があるのかもしれないが、人文社会科学系の場合、そもそも「ラボ」の観念がないので、共同研究をする場合は別として、自分の研究費は自分で獲得しなければならない。資金獲得は常に悩みの種なのである。

かく言う私は現在民間の助成を1つ頂いているが、自分が応募できる研究助成を探してい時に見つけた情報をシェアしたい。また、私個人としても来年行う予定のカタールシンガポールでのフィールドワークの経費が思ったよりも嵩みそうで、3月にこの助成が切れた後の資金繰りを考えなければいけない状況なので、他の助成をご存知の方は教えて頂けるととてもありがたい。なお、以下で挙げるのは、主に人文社会科学系のものが中心になっているが、他分野ではまた他の助成もあると思われるので、注意されたい。

  • サントリー文化財団「若手研究者のためのチャレンジ研究助成」
    • 助成内容:上限100万円
    • 対象:35歳以下の若手研究者
    • 分野:人文社会科学
    • 件数:15件程度
    • 募集時期:10月-11月
    • 助成期間:4月-3月
    • http://www.suntory.co.jp/sfnd/research/index.html
    • コメント:これが現在私が頂いている助成。財団の方がとても親切。あと「アステイオン」を送ってくれるのが嬉しい。
  • 三島海雲記念財団「個人研究奨励金」
    • 助成内容:100万円
    • 対象:①日本在住の研究者(国籍不問)、及び海外在住の日本人研究者、②大学院博士課程<後期>在籍者(及びそれに相当する大学院生)
    • 分野:①自然科学部門(食の科学に関する学術研究)、②人文科学部門(アジア地域を対象とし、史学・哲学・文学を中心とする人文社会科学分野における学術研究(但し、日本を中心とする研究は除く))
    • 件数:54件程度
    • 募集時期:1月-2月
    • 助成期間:7月-6月
    • http://www.mishima-kaiun.or.jp/assist/post-3.html
    • コメント:カルピス創業者が三島海雲。最近伝記が出た(https://www.shogakukan.co.jp/books/09389777)。
  • りそなアジア・オセアニア財団「調査研究助成」
    • 助成内容:50-100万円
    • 対象:日本の大学もしくは研究機関等に所属する方からの推薦が得られる35才以下
    • 分野:アジア・オセアニア諸国・地域に関する社会、文化、歴史、政治、経済等の調査・研究
    • 件数:24件(2018年)
    • 募集時期:6月-7月
    • 助成期間:4月-3月
    • http://www.resona-ao.or.jp/project/promotion_application.html
    • コメント:今年出したらよかったのだが考え始めるのが遅く逃した…
  • 松下幸之助記念財団「研究助成」
    • 助成内容:上限50万円
    • 対象:大学院博士後期課程在籍者、及び博士後期課程終了後5年以内の者
    • 分野:人文科学・社会科学の領域において「国際相互理解の促進・わが国と諸外国との間に介在する諸問題の解決」「自然と人間との共生」に関する世界的な視野に立った社会的・学術的に要請の高い諸施策の提案、調査研究
    • 件数:50件程度
    • 募集時期:4月-5月
    • 助成期間:10月-9月
    • http://matsushita-konosuke-zaidan.or.jp/works/research/promotion_research_01.html
    • コメント:途上国研究をしている人には言わずとしれた財団。
  • 髙梨学術奨励基金「若手研究助成」
    • 助成内容:総額2150万円とのみ記載
    • 対象:満39歳以下の日本の国籍を有する者
    • 分野:①歴史学、②文明興亡史の調査研究
    • 件数:不明
    • 募集時期:12月-2月
    • 助成期間:4月-3月
    • http://www.disclo-koeki.org/06a/00848/index.html
    • コメント:分野は狭いが当てはまると良さそう。

これを書いていて思い出したのは、修士の頃はこうした助成を受けることが、博士になった今と比べて極めて難しかった(というかほぼ無理)ということである。若手研究者向けの助成もほとんどが博士以降を対象にしているためだ。しかし、修士といっても研究によっては資金が必要になることはあるし、それがないことで研究ができなくなってしまうのは大きな損失である。博士の方が修士の研究より平均して優れているのは確かであろうし、未熟な研究にお金を出すような余裕は誰にもないとは思うが、だからといって門前払いするのではなく、それは要求水準を高く保つことで質をコントロールすればよいのではないか、とも思う。少なくとも研究者を目指している人の間では、修士も博士も同じように選考の対象にしてもいいのではないだろうか。個々の大学がそれをカバーできればいいのだが、現状必ずしもそういう風にはなっておらず、そもそも博士に対しても、学会の旅費の補助などを行っている国内大学は多くない。

なお、こうした助成を情報を得るには、個別の財団について人づてやインターネットで検索する以外に、一括でまとめているサイトも存在する。国内のものではコラボリー、海外(アメリカ中心)のものではInstrumentlといったサービスが有用なようだ*1

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手元にあった唯一のお金の写真。二千円札を久しぶりに見たい人は、「研究助成を二千円札で頂けませんか」と財団にお願いしてみても良いかもしれない。採用取り消しになること請け合いだ。

 

※ 追記:予想外に沢山の他分野の助成の情報を頂いたので、以下のリンクで誰でも編集できる公開のリストにしてみました。対象も人文社会科学に限らず、全分野に広げます。ただ現時点では、【海外から】応募できる【院生】を対象に含んだ助成がリストの対象です。よろしくお願いします!

 

*1:後者は以前Lab-Onで紹介されていたので知った。