紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

Ph.D2年目の終わり

今年度はあまりオックスフォードにいなかったので大して実感がなかったのだが、気づけばPh.D生活も2年目が終わりを迎えている。本当に「気づけば」という感じで、一時帰国して知り合いに会う度に、「もう2年経ったの?」と驚かれる。自分でも驚く。つい最近渡英したばかりのような気がする。まあそれを言い出せば、つい最近学部生だったような気もするし(卒業が4年前)、つい最近中学生だったような気もするし(卒業が11年前)、何ならつい最近赤ちゃんだったような気もする(27年前)。それはさすがにないか。

ブログにせよ日記にせよ、継続するというのは良いもので、1年前、2年前の今頃に自分が何を考えていたかがはっきりと記録されている。もちろん記録していないこともあるわけだが、何も残していないよりはマシだろう。去年のちょうど今頃、私は「Ph.D1年目の終わり」という記事を書いていたようである。

その頃は、博士課程の第一関門である、Transfer of Statusの原稿を提出し、口頭試問の日程を待っているところであった。上の記事によると、1年前の私は、1年目を振り返ってこのように述べている。

Ph.D1年目は、やはり慣れることにある程度時間がかかったというか、日本のシステムからこちらのシステムに移行して、授業と研究のバランスとか、何が求められているのかの理解とか、色んなことにそれなりに時間を要した。留学前には自分の研究テーマはかなり固まっているように思い込んでいたが、実際に進めようとしてみると、見えていなかった問題点や、考えるのを先延ばしにしていた課題に直面することになった。また、自分の知識がいかに限られているか、ということも自覚せざるを得なかった。今は読まなければいけない文献が目の前にうず高く積もっている。また、アウトプットの面では、早く出版したい論文が複数あるのだが、満足できるような進捗を生むことはまだできていない。結局、研究に対して常にトップギアでは取り組んでいなかったのかもしれない。これらは夏の間に何とか挽回したい。

なるほどそうだったのか。大変だったのだなあ。よく頑張った。と言ってやりたい。2年目になって、良くも悪くもオックスフォードの環境には慣れ切ってしまった感がある。博士論文のプロジェクトは、方向性が固まり、もちろん今後実際に執筆のフェーズに入ると色々と路線変更を強いられることはあるのだろうけれど、今のところはこのまま進めば大丈夫ではないだろうか、と思われるくらいにはなった。研究に対してトップギアで取り組んでいたかと言われれば、ビリヤード台やビールなんかが思い浮かんでしまうが、まあ、やるべきことは最低限一応やったかな?とは思える。

この記事には、最後に「来年度の目標」として、以下のことが挙げられていた。

来年度は、セミナーや学会等を通じてもっとネットワークを広げること、論文を複数publishすること(特に英語での1本目が早く欲しい…)、そして何より、博士論文を大幅に進捗させることを目標とする。

なかなか欲張った目標を立てていたようだ。元々、目標はちょっと無理でしょうというところに設定しておくのが良いと信じているのだが、これらの目標を達成できたかというと、60-70%くらいだろうか、という気がする。セミナー後に前から憧れていた先生と色々と話すことができたり、他大学の院生との繋がりができたり、学内のセミナーで発表したりと、少しずつネットワークは広げられた感がある。どこにどういう人がいて、誰と繋がっていて、どんなことをしているという「土地勘」みたいなものは、昨年と比べれば少しは身に付いたはずである。ただ、まだ満足できるほどには至っていない。論文については、とりあえず年末に日本語で1本出すことができ、1年1本の目標は達成できた。「英語での1本目」についても、今R&Rになっているものが一応あり、もしそれが通れば、遠からず発表できるかもしれない(が、まだわからない)。博士論文の進捗という面では、公文書館に通い詰めたり、フィールドワークを行ったりして、資料収集という意味では進捗がそれなりにあったとも言える。ただ、実際に書き始めたわけではないので、目に見える形で何%できた、というわけではない。

オックスフォード生活は依然として楽しいのだが、フィールドワーク等の関係で、今年度は1学期目しかオックスフォードにいなかった。また、過去の記事でも書いたのだが、やはり1年目と2年目では感覚が異なり、とにかく沢山友達を作ってsocializeしていた1年目と比べると、2年目は落ち着いたというか、今いる友達を維持しつつ、少し新たな友人を作る、という感じのメンタリティになった。とはいえ、週末にディナーをしたりビリヤードをしたり、ダイニングホールやコモンルームで友達と食事をしながら話したり、たまにロンドンに遊びに行ったりという生活は続いていて、やっぱりオックスフォードの生活は好きだなと思う。

来年度の目標としては、学会や学内外の研究会に顔を出してネットワークを広げること、学内で研究グループを主催すること、マレー語/インドネシア語を習いに行くこと、ティーチングをやってみること、博士論文を半分程度まで進めること、あとできれば雑誌論文をもう一本出せるような状態にすること、そして研究以外では、研究と生活の時間の良いバランスを見つけること、本業以外の何かを極めること、イギリスを旅行やメディアを通じてもっとよく知ること、などを挙げておく。また今年も欲張った目標を立ててしまった。

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内容とは特に何の関係もない紫陽花