紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

2019年10月-12月に読んだ小説

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四半期ごとに読んだ小説をまとめる試みを続けてきたが、第四四半期ということで、この四半期に読んだ小説と、一年間に読んだ小説の振り返りの両方を行いたい。

2019年10月から12月の間に読んだ小説は、10冊であった。1-3月が45冊、4-6月が20冊、7‐9月が19冊だったので、だんだんペースダウンしていることになる。徐々に忙しくなっていったので仕方がないのかもしれない。

日付 タイトル 著者
10月2日 男どき女どき (新潮文庫) 向田 邦子
10月30日 痴人の愛 (新潮文庫) 谷崎 潤一郎
11月2日 夜行 (小学館文庫) 森見 登美彦
11月22日 月魚 (角川文庫) 三浦 しをん
12月6日 ツ、イ、ラ、ク (角川文庫) 姫野 カオルコ
12月23日 黒書院の六兵衛 (上) 浅田 次郎
12月24日 黒書院の六兵衛 (下) 浅田 次郎
12月28日 ジョン・マン1 波濤編 (講談社文庫) 山本 一力
12月28日 ジョン・マン2 大洋編 (講談社文庫) 山本 一力
12月31日 ジョン・マン3 望郷編 (講談社文庫) 山本 一力

正直なところ今回は、ものすごく気に入ったという作品はないのだが、森見登美彦はやはり出たら必ず買ってしまう。私の世代で関西と何らかの結びつきがある男性には、そういう人が多いのではないだろうか。もっとも『夜行』は、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』のような面白バカバカしい系の作品とは異なり、『きつねのはなし』などの怪談系の作品に近い。なので森見登美彦独特のユーモアはあまり入っていないのだが、しかし読み応えのある小説に仕上がっている。最新作の『熱帯』も文庫化されたら読もうと思う。 

夜行 (小学館文庫)

夜行 (小学館文庫)

 

谷崎潤一郎の『痴人の愛』は、どうしようもない主人公たちが織り成すドロドロの恋愛模様が救いようがない。でも読まずにいられない。少女を引き取って育てて結局妻にするという主人公も異常だし、平気で夫以外の複数の男性と関係を持ち夫を振り回す妻も異常だし、誰一人まともな人間が出てこない。ある意味「怖いもの見たさ」に読みたくなるような小説であり、そしてそういう動機を持つ時点で、我々も主人公と変わらないのかもしれない。

痴人の愛 (新潮文庫)

痴人の愛 (新潮文庫)

  • 作者:谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1947/11/12
  • メディア: 文庫
 

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さて、第四四半期の小説のまとめはさらっとこれくらいにしておいて、次に一年間に読んだ小説全体のまとめをしたい。

2019年に読んだ小説は、全部で94冊であった。 惜しくも大台に6届かず、残念。およそ4日に一冊のペースだ。2018年は68冊、2017年は89冊だったので、記録を取り始めてからは一番読んだことになる。

こんなに小説を読んだ要因は、カタール、ただこれに尽きる。1月から3月の読書量は45冊、実に全体の半分を占める。つまり2日に一冊は小説を消費していたことになる。異常なハイペースだ。カタールで「フィールドワーク」をしていた2ヶ月少々の間は、本当に娯楽がなく、また現地に友達もほとんどいなかったので、余暇の時間はひたすら小説を読んだりドラマを観たりして過ごしていた記憶がある。人それぞれ合う合わないがあるので、気に入る人は気に入るのかもしれないが、正直私はもう戻りたくないなあ。

さて、改めて今年読んだ94冊をリストにしてみたい。相変わらず時代小説が一定の割合を占めているが、去年と比べると今年はけっこう多角化した1年だった。

日付 タイトル 著者
1月8日 君の隣に (講談社文庫) 本多 孝好
1月8日 みかづき (集英社文庫) 森 絵都
1月8日 グラスホッパー (角川文庫) 伊坂 幸太郎
1月12日 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月14日 九紋龍 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月14日 夜哭烏 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月19日 菩薩花 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月19日 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月19日 夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
1月23日 狐花火 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
2月3日 つまをめとらば (文春文庫) 青山 文平
2月3日 あの家に暮らす四人の女 (中公文庫) 三浦 しをん
2月3日 銀河鉄道の父 第158回直木賞受賞 門井 慶喜
2月6日 伊賀の残光 (新潮文庫) 青山 文平
2月6日 鬼はもとより (徳間文庫) 青山 文平
2月7日 白樫の樹の下で (文春文庫) 青山 文平
2月8日 かけおちる (文春文庫) 青山 文平
2月14日 乾山晩愁 (角川文庫) 葉室 麟
2月14日 春山入り (新潮文庫) 青山 文平
2月14日 マチネの終わりに 平野 啓一郎
2月15日 エイジ (新潮文庫) 重松 清
2月21日 戸村飯店 青春100連発 (文春文庫) 瀬尾 まいこ
2月21日 幸福な食卓 (講談社文庫) 瀬尾 まいこ
2月21日 図書館の神様 (ちくま文庫) 瀬尾 まいこ
2月21日 春、戻る (集英社文庫) 瀬尾 まいこ
2月21日 天国はまだ遠く (新潮文庫) 瀬尾 まいこ
2月24日 吉原手引草 (幻冬舎文庫) 松井 今朝子
2月24日 コンビニ人間 (文春文庫) 村田 沙耶香
2月25日 しずかな日々 (講談社文庫) 椰月 美智子
2月26日 卵の緒 (新潮文庫) 瀬尾 まいこ
2月28日 おとこの秘図(上) (新潮文庫) 池波 正太郎
2月28日 おとこの秘図(中) (新潮文庫) 池波 正太郎
3月2日 おとこの秘図 (下) (新潮文庫) 池波 正太郎
3月3日 タルト・タタンの夢 (創元推理文庫) 近藤 史恵
3月3日 ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫) 近藤 史恵
3月5日 バビロンの秘文字(上) (中公文庫) 堂場 瞬一
3月7日 バビロンの秘文字(下) (中公文庫) 堂場 瞬一
3月10日 まんぞく まんぞく (新潮文庫) 池波 正太郎
3月10日 あかね空 (文春文庫) 山本 一力
3月10日 オー!ファーザー (新潮文庫) 伊坂 幸太郎
3月21日 損料屋喜八郎始末控え (文春文庫) 山本 一力
3月22日 男振 (新潮文庫) 池波 正太郎
3月23日 恋愛寫眞―もうひとつの物語 (小学館文庫) 市川 拓司
3月25日 ふがいない僕は空を見た (新潮文庫) 窪 美澄
3月27日 忍びの旗 (新潮文庫) 池波 正太郎
4月5日 黒幕 (新潮文庫) 池波 正太郎
4月5日 ニワトリは一度だけ飛べる (朝日文庫) 重松 清
4月6日 家族シアター (講談社文庫) 辻村 深月
4月15日 武士の紋章 (新潮文庫) 池波 正太郎
4月15日 民王 (文春文庫) 池井戸 潤
4月15日 谷中・首ふり坂 (新潮文庫) 池波 正太郎
4月17日 堀部安兵衛(上) (新潮文庫) 池波 正太郎
4月22日 堀部安兵衛(下) (新潮文庫) 池波 正太郎
4月26日 監督と野郎ども (集英社文庫) 川上健一
5月13日 凍りのくじら (講談社文庫) 辻村 深月
5月19日 奥様はクレイジーフルーツ (文春文庫) 柚木 麻子
5月19日 海の見える理髪店 (集英社文庫) 荻原 浩
5月21日 罪の声 (講談社文庫) 塩田 武士
5月23日 サンティアゴの東 渋谷の西 (講談社文庫) 瀧羽 麻子
5月28日 サブマリン (講談社文庫) 伊坂 幸太郎
6月12日 明るい夜に出かけて (新潮文庫) 佐藤 多佳子
6月20日 細雪(上) (新潮文庫) 谷崎 潤一郎
6月20日 細雪(中) (新潮文庫) 谷崎 潤一郎
6月20日 細雪 (下) (新潮文庫) 谷崎 潤一郎
6月20日 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 今村翔吾
7月8日 Good old boys (集英社文庫) 本多 孝好
7月11日 ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫) 山内 マリコ
7月13日 dele3 (角川文庫) 本多 孝好
7月14日 愛がなんだ (角川文庫) 角田 光代
7月17日 太陽の棘 (文春文庫) 原田 マハ
7月23日 百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫) 中田 永一
7月25日 プラチナタウン (祥伝社文庫) 楡 周平
8月2日 水曜の朝、午前三時 蓮見 圭一
8月2日 ナオタの星 (ポプラ文庫) 小野寺 史宜
8月7日 深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫) 北原 亞以子
8月12日 おせん (新潮文庫) 池波 正太郎
8月16日 吉祥寺の朝日奈くん (祥伝社文庫) 中田永一
8月19日 海うそ (岩波現代文庫) 梨木 香歩
8月20日 真夏の島に咲く花は (中公文庫) 垣根 涼介
8月23日 いつも彼らはどこかに (新潮文庫) 小川 洋子
9月16日 雪国 (新潮文庫) 川端 康成
9月21日 家康、江戸を建てる (祥伝社文庫) 門井慶喜
9月22日 格闘する者に○ (新潮文庫) 三浦 しをん
9月27日 おろしや国酔夢譚 (文春文庫) 井上 靖
10月2日 男どき女どき (新潮文庫) 向田 邦子
10月30日 痴人の愛 (新潮文庫) 谷崎 潤一郎
11月2日 夜行 (小学館文庫) 森見 登美彦
11月22日 月魚 (角川文庫) 三浦 しをん
12月6日 ツ、イ、ラ、ク (角川文庫) 姫野 カオルコ
12月23日 黒書院の六兵衛 (上) 浅田 次郎
12月24日 黒書院の六兵衛 (下) 浅田 次郎
12月28日 ジョン・マン1 波濤編 (講談社文庫) 山本 一力
12月28日 ジョン・マン2 大洋編 (講談社文庫) 山本 一力
12月31日 ジョン・マン3 望郷編 (講談社文庫) 山本 一力

この中で、最も自分の印象に残った作品を3つ選ぶとすれば、青山文平『つまをめとらば』、谷崎潤一郎細雪』、中田永一『百瀬、こっちを向いて。』になるだろう。本当は5つ選ぼうとして、4つ目は瀬尾まいこのどれかの作品にしようと思ったのだが、その他に頭一つ抜けていると思える作品がなく、5つ目が選べなかった。

つまをめとらば (文春文庫)

つまをめとらば (文春文庫)

 
細雪 全

細雪 全

 
百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫)

 

沢山読んでいる割に少ないなと思われるかもしれないが、逆に言うとこの3作品は、自信をもっておすすめしたいと思える素晴らしい小説だった。もっとも、人が良いと言っているものが自分には全然良いと感じられない、ということは頻繁に起こるので、あまり期待しすぎずに読んでいただけるとありがたい。

来年はどんな小説に出会えるだろうか?