紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

論文が初引用された!

研究者というのは、研究の成果として論文や著書を発表する生き物だが、その出した成果が他の研究者などから参照されることに喜びを見出す生き物でもある。自分の研究が誰かの「参考文献」となることは、端的に言って嬉しい。

先日、Google Scholarから一通のアラートメールが来た。件名は、"New citations to my articles"。私は去年、「資源の呪い」に関する論文をDemocratization誌に掲載したのだが、この論文が引用されたらアラートでお知らせしてくれるように設定していた。その第一号のメールが来たのである。

開いてみると、私の論文が、Asian Journal of Comparative Politicsという雑誌に掲載された論文に引用されたとのことだった。

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アブストラクトを読んでみると、アジアにおける資本主義と民主主義の関係を扱った論文らしい。私の論文はどこに引用されているのかと読み進めていくと・・・

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あった!色んな事例を網羅的に見る中の一つとして、ブルネイの事例において、国家の石油収入独占は国家形成自体に起因するので、資本主義への攻撃ではない、という文脈で引用してくれているらしい。後半部は私が直接言及していることではないが、前半部から著者が導いた帰結なのだろう。

ところで、私の論文をGoogle Scholarで見てみると、引用数が「2」となっている。実は前から「1」となっていたのだが、数字をクリックしても何に引用されているのか出てこなかったのだ。モントリオール大学の東南アジアに関するブログに引用されているのを確認したので、それのことかもしれない。

どちらの引用にしても、掲載された雑誌の性格からか、論文のフレーミングからか、今のところ、ブルネイという事例についての引用が多く、「資源の呪い」という理論的観点からの引用はまだされていないようだ。本当はこっちを望んでいるのだが、なかなか意図した通りにはいかないようだ。

それにしても、英語論文は、Google Scholarや掲載元の出版社のウェブサイトなどから、簡単に被引用を把握できるのだが、日本語の論文はそれが容易ではない。Google Scholarにはきちんと日本語論文が網羅されていないし、CiNiiでは被引用は表示されないものが多い。そのため、私も過去に日本語で論文をいくつか出しているが、それらが引用されたかどうかは、把握できていないのが現状だ。

いずれにせよ、論文を出す→引用される、という、「大人の階段」をまた一つ上れたことが、今は嬉しい。