紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

ケンブリッジ最初の2週間

博論提出から4ヶ月近くにも及んだ一時帰国を終えて、イギリスに戻ってきてから、2週間ほどが経った。最初の1週間ほどは隔離期間だったので、実質出歩いたのはまだ数日であり、右と左はわかるが、右斜め上と左斜め下はわからない、というくらいのケンブリッジ初心者である。

行きの飛行機はJALだったが、相変わらずガラガラで、羽田空港内の店もことごとく閉まっていたので、朝のフライトだった私は朝食を食べる場所が見つからなくて困った。イギリス入国はフォームの確認などでめちゃくちゃ待たされると友人たちからは聞いていたのだが、行ってみると、従来通り自動化ゲートが使え、コロナ関連のフォームもまったく確認されることなく通過できた。今回は新しいビザになるので、果たして入国管理官を通さなくていいのか分からなかったが、その後問題なくBRP(滞在許可証)も取得できたので大丈夫だったのだろう*1。4年間も滞英して、この国のいい加減さがわかったので、あまり気にすることもなかった。

オックスフォードはヒースロー空港から直通のバスが30分に一本くらい出ているのだが、ケンブリッジは予想外にヒースローからのアクセスが悪く、キングズクロスまで出て電車に乗る必要が出てくる。しかし20kg超えのスーツケース2つを抱えて電車を乗り継ぐのは長距離フライト後の身体にはしんどかったので、今回ばかりはタクシーで行こうと思って乗り場のおじさんに声をかけたら、料金表を見せられ、250ポンド近い値段を提示されたので、それはいくらなんでも高すぎるだろうと思って断った。普通にメーターで行ったら100ポンド少々のはずなので、なんでオフィシャルなタクシー乗り場であんな値段設定になっているのかわからない。Uberを頼んだら、100ポンド以下で乗ることができた。それでも安くはないが、一回限りなので仕方がないと思うことにした。

話していると、Uberの運転手はブルガリア人で、私が日本人だと言うと、「琴欧洲を知ってるかい?俺と同じ村の出身なんだよ。」と言ってきて、本当か嘘かわからないけど、琴欧洲は母国でも知られているんだなというのが面白かった。思ってたよりはるかにイギリスは暑くて、日差しも日本より絶対強い気がする。

私が所属するWolfson Collegeは、ケンブリッジの南西部にあり、中心からはけっこう離れている。これは新しいカレッジの運命とでも言うべきもので、歴史の古いカレッジは中心部にあって街とともに発展してきたのに対し、後発のカレッジは周辺に土地を得て拡大していくしかなかったのだ。でもWolfsonは、小さいカレッジではあるが、姉妹カレッジであり私のオックスフォード時代のカレッジでもあるSt. Antony'sよりも芝生や建物がきれいで、なかなか気に入った。ポーターのおじさんたちも非常に親切で、正直少し驚くほどだ。

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隔離期間中は、2日目と8日目に検査を行い(注文したキットで自分で検体を採取し、郵送する)、10日間が済んだら解放される。オプションとして、5日目に検査を受けてそれが陰性なら早く解放されることもでき、私はそれを購入していたので、結果が出る6日目にはめでたく解放となった。

それからはちょくちょくケンブリッジの街を散歩したりしているのだが、入国後ずっと天気が良かったというバイアスを抜きにしても、ケンブリッジの街はオックスフォードよりも雰囲気が良いと思う。オックスフォードは、ケンブリッジよりも大きな都市であるせいか、あまり雰囲気のよくない地域などもあったりして、小さいけれどもいっぱしの都市という感じなのに対して、ケンブリッジは中心部に統一感があり、全体的に「かわいい町」という印象である。おそらく、「都市」と「町」の境界線は、オックスフォードとケンブリッジの間のどこかにあるのだろう。

というわけで、ケンブリッジの街は気に入ったのだが、同時に4年間オックスフォードに住んでみて、それよりも小さなケンブリッジにまた住むよりも、イギリスを離れる前に大都市を体験したい思いがあり、目下ロンドンで部屋探しをしている。しかしロンドンの部屋探しというのは、スピードと資金が必要で、なかなか難しいものだ。機会があったらまた書きたいと思う。

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物件探しの合間にパブで一杯。

そうこう言っているうちに、25歳以上のワクチン接種が解禁され、私も無事に予約を入れることができ、今日16日にようやく1度目のモデルナワクチンを接種することができた。感慨もひとしおである。しかし、イギリスはできるだけ多くの人に1回目を打つため、接種の間隔を8週間以上空ける政策を取っており、2回目が受けられるのはまだまだ先のことになりそうである。とはいえ、上の年代がほぼ打ち終わってくると、ワクチンも余ってくると思うので、どこかの時点で前倒しされるのではないかと期待している。

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ケンブリッジの会場には空きがなく、ロンドンまで行かなければならなかった。

 

*1:イギリスでは、ビザ申請が通るとまずパスポートにシールが貼られ、入国後にそれを持って郵便局などで滞在許可証を受け取ることになっている。