紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

英米政治学Ph.D出願の記録⑨:合否を待つ

前回の記事はこちら

penguinist-efendi.hatenablog.com

前回はイギリスにおける指導教員とのコンタクトの話をしたが、今回はついに(!)出願後の話に移る。やっとここまでたどり着いた…書き始めた時は2、3記事でまとめるつもりだったのだが、気づいたらもう10記事目である(⑨だが②を2つに分けたので)。もっとも、書き出すと長くなる自分の癖は分かっているので、薄々感づいてはいたのだが・・・

  • 合否が出る時期

アメリカは12月の初旬から中旬に締め切りがあり、イギリスは1月の初め頃が多いだろうか。アメリカについては結果は早いところでは1月末に出るが、2月が一番集中し、3月にはwaitlistの知らせが中心になると思う。イギリスについては2月後半から3月が中心だろう。特に2月は毎日がドキドキで他のことが手に付かない。振り返ってみても、自分がその期間に何をしていたのか思い出せない。まあ、修論も出して出願も終えて、とにかく疲れていたから、ほとんど何もせずに過ごしていたに違いない。

合否を待つ上で困るのが、時差の問題である。アメリカの場合、14時間とか16時間とか時差があるから、大体日本にいる我々が寝ている間にメールが来る。それが分かっているので、早朝4時とかに目が覚めてこわごわスマホを確認してまた睡眠に戻り、また6時に目が覚める、なんていう状況が1ヶ月も続くのである。寝不足と生活リズムのずれが激しかった。

いつ頃合否が出るのかは、Grad Cafeというサイトで大体当たりをつけることができる。ここは出願者が結果が出たらそれを投稿する掲示板みたいなもので、ここに自分の出願先の結果が出始めると、自分もそろそろかなと分かるし、去年のものを遡れば大体どの時期に出るかが予想できる。まあ、実際には人と違う時期に来ることもあるし、毎年微妙にずれるので、正確には分からないので、あまり気にしすぎて不安になるのは良くない(といっても多分なるであろうははは)。

thegradcafe.com

  • 私のケース

私の場合、最初に来た通知が、1月27日のノースウェスタンからの合格通知だった。最初はどんな形式で通知がなされるのか知らなかったが、朝方目が覚めてスマホを見たらメールが入っていた。文面には合否は書いていなくて、ウェブサイトに飛んで合否を見る形式。跳ね起きてパソコンの電源を点けて確認したんだっけ。正直、かなり厳しい戦いになるだろうと思っていたから、最初から合格なんてものが舞い込むとは思っていなかった。期待せずに見たら、"We are delighted to offer you admission to the Northwestern University Department of Political Science Graduate Studies Program."という文章が。一番ファカルティとの相性が良さそうに思っていた大学でもあったので、あるいは合格するかもとは頭の片隅で思っていたが、やはり本当に合格できるんだというのが純粋な驚きだった。

しかし、この最初の合格を得てからが長かった。これは意外と合格するんじゃないか、などと当初少し欲目が出たが、そこから次に合格が出た2月14日のブラウンまで、何校か不合格通知が続いた。不合格通知はメール本文に書かれている場合もあれば、ウェブサイトに飛んで確認する場合もある。メール本文に書かれている場合はこんな感じ。ここは親切にも、「いかに競争が激しかったか」を書くことでショックを和らげようとしてくれている。366人受けて最終的に入るのが12人程度、合格はその2倍出しているとして、合格率は約6.6%。トップ30~40くらいに入るアメリカの大学なら、倍率は同じく数%~10%くらいだろう。だから何校も受ける必要があるのだ(と言いつつ、合格は特定の人に集中するのも確か)。

Dear ----,

 

Thank you for your interest in ---- University’s doctoral program in political science. Your application for admission has been given careful consideration by the faculty. We regret to inform you that your application has not been approved.

We received more than 366 high-quality applications. This large number of applicants, combined with the small size of our program (we average classes of 12 students), meant that we were able to extend offers to only a very small number of those who wanted to study here. We could easily fill a class size of twelve several times over with excellent students.

Once again, we sincerely appreciate your interest in ---- and thank you for your application. On behalf of the entire faculty of the Government Department, I wish you success in continuing your studies.

 

Sincerely,
----

ブラウンの合格が出た後も、結局アメリカの大学からそれ以上合格は出ず、シカゴが修士課程の奨学金付き合格をくれたのと、ジョージタウンが補欠になっただけだった。ある程度予想していたが、なかなか厳しい結果だったと言えよう。

2月末にノースウェスタンを訪問して、先生や財政支援に対して非常に良い印象を受けたので、ここに行くことになるのかなあと漠然と考えていたが、3月になって、オックスフォードというもう一つの本命の行方が気になってきた。しかしオックスフォードは本当に合否が出るのが遅く、毎年締切から8週間以内(今年の場合だと3月10日までだっただろうか)と言いつつそれを過ぎても一向に合否が出ず、Grad Cafeの住人もしびれを切らしていた。

待ちくたびれて、もういいや俺はノースウェスタンに行くから勝手にしろ、と思い始めていた3月23日の夜、ベッドに入って寝る態勢に入ったら、布団の下でスマホが振動した(睡眠アプリのために布団の下にスマホを入れている)。いつもならもう寝るからと無視するのだが、その日は何となく予感がして画面を開くと、"DPhil in International Relations (Oxford)"という題名のメールが入っていた。急いでそれを開くと、"Please find attached some good news regarding your application to Oxford!"というだけの素っ気ない本文。添付ファイルを開けると、"I am delighted to inform you that your application for admission to the University of Oxford as a graduate student has been successful."という紛れもない合格通知が。しかしそこで去来した思いは、あふれ出る喜び、というよりは、ふっおいおい受かったぞまじか、という中途半端な感情だった。純粋に喜べなかった理由は明白で、自分には、大学という意味においても国という意味においても、「第一志望」がなかったからだ。合否が出揃った今、本当に自分の進学先を決めなければならない、という現実にいざ直面して、戸惑ってしまったのである。ここで予感したように、実際に進学先決定のプロセスは、泥沼のような悩みの日々であった。

その話はまた次回以降に。