紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

どうでもいいというほどではない話

好きな音楽二段階仮説

「好きな〇〇」という質問 「好きな〇〇は何ですか?」と聞かれると返答に困ることがある。とはいってももちろん「好きなクワガタは何ですか?」と聞かれれば、まあやっぱりアスタコイデスノコギリクワガタと答えるだろうし、「好きなテニスラケットの振動止…

コロナ禍のイギリスからの帰国と隔離

一体誰が、「コロナ禍」などという言葉を使い始めたのだろう。少なくとも私は、今まで日常で「禍」という漢字が入った言葉を用いた記憶はほとんどない。「コロナ禍」というのは、「新型コロナウイルスが流行しているこの社会の状態」というのを、字数制限の…

「ちちんぷいぷい」に捧げるレクイエム

おそらく関西圏に住んだことのない人には何のことかわからないだろう。「ちちんぷいぷい」とは、TBSと同系列の毎日放送(MBS)という関西ローカルの放送局によって、1999年から22年間ものあいだ放送されてきた、午後の情報番組である。アクの強い同時間帯の…

夜研究をしないということ

夕食後は一切研究をしないようになって、そろそろ2年が経つ。 多くの院生と同様、もともと私は昼夜の別なく、勉強や研究をやってしまう性質だった。考えてみれば中学受験の塾からして、学校が終わった後に始まり、夕食を挟んで夜まで授業が行われていたのだ…

新年の抱負

あけましておめでとうございます。 今年はトロントにいた2014年以来、久しぶりに国外で迎える新年である。どうせ日本にいても帰省はしないほうがいいのと、博論が佳境を迎えており、時差を調整する時間のロスが惜しいので、こちらに留まることにした。私は本…

年齢確認のたそがれ

博論を書いている。それはそれはもう博論を書いていて、率直に言って驚いているほどだ。最近では博論を書きすぎて、「博論を書き博論を書いて読むまた博論を書いてまた読む」という、短歌史上に残る名歌を生み出してしまった。その上でポスドクのアプリケー…

中間審査に合格/ジョブマーケット近づく

9月になった。8月中旬に日本を出てこちらに戻ってきたのだが、イギリスというか欧州はもうだいぶ気温も下がってきて、最高気温は20℃前後になっている。朝晩は長袖シャツにカーディガンやセーターを羽織ってちょうどいい、といった気候だ。ヨーロッパの夏は日…

論文が初引用された!

研究者というのは、研究の成果として論文や著書を発表する生き物だが、その出した成果が他の研究者などから参照されることに喜びを見出す生き物でもある。自分の研究が誰かの「参考文献」となることは、端的に言って嬉しい。 先日、Google Scholarから一通の…

種をまく:「コロナ時代」をどうしのぐか

「コロナ時代」を生きている。2ヶ月前には、中国が何だか大変なことになっている、という程度の認識だった。1ヶ月前には、日本を含むアジアに感染が広がり始めたことが心配になり、一方でヨーロッパではアジア人に対する差別や偏見が散見されるようになった…

オックスフォード日本食事情:自炊編

オックスフォード生活の1・2年目と3年目で、がらっと生活が変わった。最初の2年間は、カレッジの中に住んでいて、かつキッチンが共有だったため、昼も夜もだいたいカレッジのダイニングホールで食べていた。昼はみんな授業があるので慌ただしいが、夜は食後…

2019年の雑感

早いもので今年も残り3日となってしまった。昨日日本に帰国し、年末年始を実家で過ごした後、少しだけ東京に行って、そこから渡英する予定である。 しかし我々はとかく「時が経つのは早い」と言いがちだが、一体何に比べて早いと思っているのだろうか。毎年…

一次資料面白発言集:湾岸編②

前回の記事はこちら さて前回は、私が読んでいる一次資料から、イギリス植民地官僚や湾岸の現地政治家の面白発言をご紹介したが、今回はその第二弾ということで、新たに6つのエピソードをご紹介する。では早速見ていこう。 ⑤盗人のパキスタン人と、 安心と信…

一次資料面白発言集:湾岸編①

今週をもって、今年度の第一学期が終了した。わずか8週間という短い学期だが、結構盛り沢山な学期だったように思う。長らく取り組んできた研究がようやく出版されたり、初めてのティーチングを経験したり、就職活動まであと1年を切ったことに気づいて焦りだ…

君にとってのイギリスと、僕にとってのイギリス

2週間ほど前に、セミナーに参加するため、ケンブリッジに行ってきた。オックスフォードとケンブリッジというのは思いの外遠くて、直通の電車はなく、ロンドン経由で3時間近くかかり、バスは直通があるものの、4時間近くもかかってしまう。近くて遠い存在なの…

競争と洗礼:論文出版こぼれ話①(Democratization)

10月13日付で、初の英語査読論文が出版された*1。修士論文の問題意識を元に、大幅に修正しつつ書き上げたもので、博士論文との関係で言えば、関連テーマの「スピンオフ」という感じになるだろうか。投稿を開始してから2年弱が経ってやっとアクセプトされた、…

敏感な言葉

もう2年ほど前になるだろうか、こんなことがあった。一時帰国の際に仲の良い友人数人で、そのうちの1人の家で飲んでいた。色んな話をした。互いの近況から始まって、結局は20代後半らしく、最近誰が結婚したとか、お前はどうなの、みたいなありきたりな話に…

一時帰国中のSIM問題

大学・大学院留学生にとっては、5・6月のこの時期は、大学の学期が終わり、長い夏休みに入る時期だ。この時期に、日本に一時帰国しようという人も多いだろう。私もその一人である。 普段外国に基盤をおいて生活している私たちが、日本に一時帰国した際に困る…

意欲的な学部生のためのアウトプット媒体―懸賞論文という選択肢

研究者の最も重要な仕事は、研究成果を論文や本の形で出版することだろう。どの学問分野にも実に様々な雑誌が存在して、各国の研究者がその研究成果を発表している。研究者志望だと言うと、よく「勉強が好きなんですね」という、恐らく悪気のない、しかしあ…

出国前症候群

「あと3日で日本を出発して、留学先に戻る。次に帰国して家族や友達に会うのは、半年後だ。」―そういう夜に、「それ」はやってくる。 留学先にも大事な人達はいるし、生活も楽しいけれど、帰国した時のような心からの安心感、心の内奥に張り巡らせている膜が…

捕鯨、優生思想、同じ顔―腸が煮えくり返った話

「人生山あり谷あり」と言うが、生きていれば良いことも悪いこともある。そういえばこの山あり谷ありというのはどういう意味だろう。山が良いことで谷が悪いことなのか、あるいはここには出てこない、歩くのが楽な平地だけではなくて、登るのが難しい山や上…

「目的」としての日本研究、「手段」としての中国研究?

学期が終了し、オックスフォードは徐々に学生の数が減って空っぽになりつつあるが、私も今週パリ経由で帰国する予定だ。パリで3泊ストップオーバーするという旅程は1ヶ月ほど前に決めたのだが、ここに来てパリの政情が怪しくなってきた。毎土曜日に大規模な…

留学生は休暇をどこで過ごすか問題

冬が厳しさを増してきた。やはり将軍まで出世するだけはあって、冬というやつはなかなか毎年強大な力を発揮するもので、この1・2週間であっという間にイングランドを制圧してしまった。街は戒厳令下にあり、配給制になった日光を求める人々の長蛇の列がそこ…

"Your English is good." は褒め言葉か

英語圏で学位を取ろうと留学している人は、英語圏で生まれ育ったほぼネイティブの人を除いて、誰でも英語に悪戦苦闘した経験を持つだろう。外国語を第二言語として「習得」することは簡単なことではなく、今ではものすごく流暢に聞こえる人でも、そこにたど…

都会の昆虫少年だったあの頃

月末から月初にかけてアメリカに行って学会発表をしていたため、更新がだいぶ滞ってしまった。このブログの月別記事数を見てみると、ほとんど月3記事ペースで書いているようだが、6月と7月は休み期間だったからか、更新頻度が増えていた。しかし8月で月3に逆…

「エスニック料理」とは何だ

飲み会続きの毎日である。今日は朝から(!)大学時代のサークルの友人たちとバーベキューをしてその後ランチで高校の同級生たちとタイ料理を食べ、その前は大学のクラスの友人たちと和食の居酒屋で飲み、さらにその前は東京にいるオックスフォードの友人で…

研究発表にコメントするのは難しい

オックスフォードというところは、とにかく毎日随所で大量のセミナーが開催されており、興味があるものに全部行こうとすると生活が回らなくなる。私は今年は少々セーブしすぎた感があり、それほど多くに行ったわけではないが、それでも学部で開催されるもの…

日常会話と専門会話

ここ最近は、1年目の終わりに提出しなければいけない博論計画の締切が迫っていることもあってその執筆に追われている毎日であり、そのせいでブログの更新が滞ってしまっていた。博論計画を6月前半に提出した後、6月後半はIQMRという質的方法論のサマースクー…

交友関係における経路依存

今いる学部が客観的に見て学問的に最高の環境かどうかは大いに議論の余地があるが(自分の研究関心にとっては結構良いとは思うけど)、ソーシャルライフという意味でオックスフォードに来たことは間違いなく良い選択だったと言える。端的に言って毎日楽しい…

本文化と論文文化

研究者として、研究成果を発表して世に問うのは最も中心的な仕事である。自分も良い研究をして、できるだけ多くの読者を獲得したいと思っている。だが、その研究をいかなる媒体で発表するかという点においては、分野やアプローチによって大きな隔たりがある…

政治学におけるポスドク事情:キャリアセミナーまとめ

約1ヶ月ほど前に、学部で“The Academic Career Path: Postdocs”と題したポスドクについてのワークショップがあった。オックスフォードは以前はこういうキャリアセミナーみたいなものもなく、さらにアメリカのトップ校では当たり前のようにウェブサイトで公開…