紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

2019-01-01から1年間の記事一覧

2019年の雑感

早いもので今年も残り3日となってしまった。昨日日本に帰国し、年末年始を実家で過ごした後、少しだけ東京に行って、そこから渡英する予定である。 しかし我々はとかく「時が経つのは早い」と言いがちだが、一体何に比べて早いと思っているのだろうか。毎年…

一次資料面白発言集:湾岸編②

前回の記事はこちら さて前回は、私が読んでいる一次資料から、イギリス植民地官僚や湾岸の現地政治家の面白発言をご紹介したが、今回はその第二弾ということで、新たに6つのエピソードをご紹介する。では早速見ていこう。 ⑤盗人のパキスタン人と、 安心と信…

一次資料面白発言集:湾岸編①

今週をもって、今年度の第一学期が終了した。わずか8週間という短い学期だが、結構盛り沢山な学期だったように思う。長らく取り組んできた研究がようやく出版されたり、初めてのティーチングを経験したり、就職活動まであと1年を切ったことに気づいて焦りだ…

君にとってのイギリスと、僕にとってのイギリス

2週間ほど前に、セミナーに参加するため、ケンブリッジに行ってきた。オックスフォードとケンブリッジというのは思いの外遠くて、直通の電車はなく、ロンドン経由で3時間近くかかり、バスは直通があるものの、4時間近くもかかってしまう。近くて遠い存在なの…

競争と洗礼:論文出版こぼれ話①(Democratization)

10月13日付で、初の英語査読論文が出版された*1。修士論文の問題意識を元に、大幅に修正しつつ書き上げたもので、博士論文との関係で言えば、関連テーマの「スピンオフ」という感じになるだろうか。投稿を開始してから2年弱が経ってやっとアクセプトされた、…

オックスフォードにおけるティーチング

新学期が始まって、1週間が過ぎた。と書くと、「1週間しか過ぎていないのか」と思われる方がいるだろうが、そうなのである。オックスフォードでは、3つの学期をMichaelmas、Hilary、Trinityと呼び慣わしているのだが、Michaelmasは10月~12月、Hilaryは1月~…

大陸旅行2019夏:ドイツ・ベルギー編

前回の記事はこちら さて、前回はパリとストラスブールについて書いたが、今回は旅行の後半、ドイツ・ベルギー編である。余談だが、私はあまり自分の旅行に「旅」という言葉を使う気になれない。というのも、「旅」というのは、長い期間、行きあたりばったり…

大陸旅行2019夏:フランス編

去年から、ブログを月間3記事以上のペースで更新し続け、時には無理やり月末に無意味な記事を書いて帳尻を合わせるなどしてきたのだが、先月はついに2記事で終わるというミスをしてしまった。もちろん後から記事の日付を変更してさも8月中に書いたかのように…

樹液酒場の作法

いいか少年。クワガタやカブトムシが好きだと言うんだったら、一度は虫採りに出かけないといけない。ペットショップやホームセンターで買ったり、外国産の虫を売っている専門店に行ったりするのも楽しいもんだが、それだけじゃ本当の虫好きとは言えない。自…

オックスフォードに戻ってきました

暑い暑い夏の日本を出ると、そこは暑いイギリスだった。夏の間こちらに残っていた友人によると、一回寒くなって、夏は終わったと思われたらしいのだが、私が渡英した22日の前後から、また熱波が到来し、30度近い気温になっているのだ。向こうに着いたら必要…

文献の4つの読み方:勉強、探索、引用、沈潜

1年少々前に、文献ノートの取り方について記事を書いたが、それなりに反響があり、このブログの中では比較的よく読まれている記事の1つになっている。やはり、自分のプロフィールから考えると、沢山書いているふざけた記事や身辺雑記的な記事よりも、こうい…

「ソーダ味」とは何なのか?

梅雨も開け、猛暑がやってきた。私も10年ほど前までは毎日元気にテニスをしに学校に通ったり、さらにその5年前までは虫取り網を引っ提げて駆け回っていたわけだが、大学に入ってからはもっぱらインドア派になってしまった。運動をするにしても、ジムに行った…

一時帰国中の家問題

今年は学会があったこともあり、比較的長めに東京に滞在していたのだが、数日前に奈良の実家に戻ってきた。イギリスには8月後半に戻る予定である。長期留学の場合、どうしても留学先にいる期間が「本来」で、一時帰国中は半分旅行中のような、宙ぶらりんの状…

関西人に対して「方言が出ないですね」と言う人が犯している二重の過ちについて

私は関西人である。大阪に生まれ、中学の時に奈良に引っ越し、大学で東京に出てくるまで、18年間を関西で過ごした。関西育ちで両親も関西人であるから、私は当然関西弁を話す。東京にも7年近く住んだが、「標準語」に染まらず、魂を売らずに生きてきた。 に…

Ph.D2年目の終わり

今年度はあまりオックスフォードにいなかったので大して実感がなかったのだが、気づけばPh.D生活も2年目が終わりを迎えている。本当に「気づけば」という感じで、一時帰国して知り合いに会う度に、「もう2年経ったの?」と驚かれる。自分でも驚く。つい最近…

オックスフォードな人々②:マイク

前回の記事はこちら 少し前から日本に帰ってきている。今は東京にいて、古巣の大学に通ったりしているが、夜は頻繁に大学時代の友人と会う予定を入れていて、ちょっと飲み過ぎの感がある。8月末か9月初めくらいに渡英して、フラット探しとヨーロッパ小旅行を…

敏感な言葉

もう2年ほど前になるだろうか、こんなことがあった。一時帰国の際に仲の良い友人数人で、そのうちの1人の家で飲んでいた。色んな話をした。互いの近況から始まって、結局は20代後半らしく、最近誰が結婚したとか、お前はどうなの、みたいなありきたりな話に…

一時帰国中のSIM問題

大学・大学院留学生にとっては、5・6月のこの時期は、大学の学期が終わり、長い夏休みに入る時期だ。この時期に、日本に一時帰国しようという人も多いだろう。私もその一人である。 普段外国に基盤をおいて生活している私たちが、日本に一時帰国した際に困る…

オックスフォードな人々①:ドミニク

ちょっと最近暇があるので、ブログでも書こうと思っていたら、もう随分と長い間オックスフォードのことについて書いていないことに気づいた。まあカタールに行っていたので当然なのだが、副題に「オックスフォード留学記」などという凡庸な名前を付けている…

笑気ガス抜歯体験記

歯医者に行くのがキライだ。 まず混んでいるのが気に入らない。予約の電話を入れようとしても、空いている時間の方が少ないくらいだ。歯医者に行くのが趣味という人でもいるのだろうか。 次に歯医者に時々チャラチャラした連中がいるのが気に入らない。親や…

カタール日記 総集編:ドーハでわしも考えた

約2ヶ月半に及んだカタール、ドーハでのフィールドワークを終えた。この間の生活について、ブログでも毎週まとめようと思っていたのだが、最初の2週間しか続かなかった。この点に関しては誠に慚愧の念に堪えないのだが、言い訳をすれば、毎週更新するほどの…

カタールの観光名所

カタールでは、他のイスラーム諸国と同様、土日ではなく金曜日と土曜日が休みであるという話は以前の記事でもしたが、週末には大学から人が消え、キャンパス内を結ぶシャトルバスも走っていないので、通常通りオフィスで仕事をする、というのが難しい状況に…

夢のフシギ

僕には夢がある。希望がある。そして持病がある。 そういうアフラック的な話をしたいのではなくて、夜寝ている間に見る夢の話だ。誰しも夢は見ると思うが、私は人と比べても夢をよく見る方だと思う。そしてその内容を比較的よく覚えている。 その夢について…

カタール日記 Week 2:世界一退屈な街?

カタールはドーハでの「フィールドワーク」生活も、もう3週間近くが経過しつつある。こちらでは、土日ではなく金土が週末なので、日曜日に大学に行くとついつい月曜日感覚になってしまう癖が抜けない。月曜日は火曜日感覚、火曜日は水曜日感覚・・・とずれて…

カタール日記 Week 1:砂漠の国の豊かな暮らし

カタールはドーハに着いて、10日が過ぎた。実感としては、まだ10日しか経っていないのか、という方が近い。もう1ヶ月くらいいるような気がする。 以前の記事では「出国前症候群」について書いた。ああいう文章は、決まって夜に、少し目を細めて心持ち斜めを…

意欲的な学部生のためのアウトプット媒体―懸賞論文という選択肢

研究者の最も重要な仕事は、研究成果を論文や本の形で出版することだろう。どの学問分野にも実に様々な雑誌が存在して、各国の研究者がその研究成果を発表している。研究者志望だと言うと、よく「勉強が好きなんですね」という、恐らく悪気のない、しかしあ…

出国前症候群

「あと3日で日本を出発して、留学先に戻る。次に帰国して家族や友達に会うのは、半年後だ。」―そういう夜に、「それ」はやってくる。 留学先にも大事な人達はいるし、生活も楽しいけれど、帰国した時のような心からの安心感、心の内奥に張り巡らせている膜が…

捕鯨、優生思想、同じ顔―腸が煮えくり返った話

「人生山あり谷あり」と言うが、生きていれば良いことも悪いこともある。そういえばこの山あり谷ありというのはどういう意味だろう。山が良いことで谷が悪いことなのか、あるいはここには出てこない、歩くのが楽な平地だけではなくて、登るのが難しい山や上…

新しい年を迎えて

あけましておめでとうございます。 2018年は過ぎ去り、2019という新しい年がやってきた。「2018」という数字は埃に覆われてくすんで見えるようになり、一方で「2019」という数字にはおろしたての新鮮さを感じる。などというのは今だけのことで、我々はじきに…