GW明けからオックスフォードに滞在している。勤務先とオックスフォードが入っている大学連合が若手向けフェローシップを設けていて、それを利用して2ヶ月ほどこちらにいることになった。
私が博士を取ったのが2021年の3月で、イギリスを去ったのが2022年の9月だったから、イギリスに来るのは約1年半ぶりということになる。帰国した当初はもっとイギリスにいたかったと思い、新しい仕事への適応期間もあってノスタルジックに思い出したりもしていたが、東京での環境に慣れる中でもう少しフラットに見られるようにはなってきた。
生活面では圧倒的に日本に軍配が上がると思うようになった私だが、学問的にはイギリスを今でも「故郷」と思っているところがあって、やっぱり自分の研究関心に重なりが多い人は、日本よりもイギリス(やヨーロッパやオーストラリア)に多いような気がしている。そういう人たちの大半にはISAのHistorical IR分科会に行けば会えるのだが、それは年に1回しかなく、それだけでは研究状況をフォローするには物足りない。なので今回のようにまとまった期間滞在できるというのは非常にありがたいことだ。
5月8日にイギリスに飛んで、オックスフォード行きのバスに乗ったのだが、もうそのバスのチケットを買うためのアプリを再ダウンロードしたところから懐かしい。ちょうど温かい一週間の最中で、気温はそんなに高くないのに日差しは日本よりも強い気がして、身体の温度がじんわりと上がっていくのも懐かしい。でも日が沈むと一気に空気が冷えてくるのも懐かしい。
翌日にはかつて所属していたSt. Antony'sで、今も博士をやっている盟友ドミニクに久しぶりに会った。この1年半、2週間に1回ほどのペースでビデオ通話をするというマメなやり取りを続けていたが、やはり直接会うのはぜんぜん違う。
5月10日にはケンブリッジでHistorical IR Conferenceという年に一度の祭典が開かれるということで、時差ボケを振り切って行ってきた。直前まで行くか迷っていたのだが、思い切って行ったのは大正解だった。
私にとってポスドクをやっていたケンブリッジのIR & History Working Groupのメンバーは年齢も国籍も超えた学界で一番の仲間たちで、顔を見るだけで楽しい。ポスドク時代のホストだったJason以外の人には行くことを伝えていなかったので、昼休みの間にしれっと混じってそれぞれに挨拶したら、みんな一様に一瞬何気なく挨拶を返した後に二度見して、幽霊でも見たような顔をして驚くのが面白かった。何でこいつがここにいるの、みたいな。
今回はスピーカーではなかったので、カンファレンスの後のディナーには参加できないはずだったのだが、一人欠席者が出たことでディナーに加えてもらうことができ、じっくりキャッチアップもできたし、何人かに自分の本を渡すこともできた。ケンブリッジには、私をニッコニコにしてくれる人たちがいる。その後、カタールフィールドワーク以来の盟友であるカリムがケンブリッジにいたので、こちらもパブで2年ぶりくらいに会って話をした。
その日はケンブリッジに一泊して、翌日は朝ご飯をポスドク時代のカレッジの友達と食べ、昼は私が博士に入った年にオックスフォードの修士に入り、私がポスドクを始めた年にケンブリッジの博士に入った友達と食べた。1泊2日でケンブリッジの知り合いのほとんどに会えた、実に効率の良い弾丸遠征だった。オックスフォードからケンブリッジは一回ロンドンを経由して3時間くらいかかるので、実際かなりの遠征になる。
日曜日はもうなし崩し的に安息日という感じで、渡英以来の疲れがどっと出て1日中寝たりぼーっとしていた。時差ボケは徐々に治りつつある。もう少しゆったりとできるかと思ったが、締切があったり、いくつか学会やワークショップで出張の予定もあったりして結局忙しい2ヶ月になりそうだ。毎年来られるわけでもないので、この期間をできるだけ大事にしたいと思っている。