オックスフォード生活の1・2年目と3年目で、がらっと生活が変わった。最初の2年間は、カレッジの中に住んでいて、かつキッチンが共有だったため、昼も夜もだいたいカレッジのダイニングホールで食べていた。昼はみんな授業があるので慌ただしいが、夜は食後に連れ立ってコモンルームに行き、コーヒーや紅茶を飲みながら小一時間とりとめもない話をするのが、毎日の楽しみだった。オックスフォードの醍醐味を存分に味わうことができた。
3年目になって、カレッジからは少し離れたアコモデーションに住み始め、大きなキッチンを独占できる環境ができた。またカレッジが大規模改修工事に入り、コモンルームや食堂があった建物が閉鎖され、中庭に建てられたプレハブに代替されるようになってしまったため、夕食後にコモンルームに行くという慣習が失われてしまった。そのため、今年度になってからはカレッジのダイニングホールから足が遠のき、ほとんど毎日自炊をする生活に切り替わった。
カレッジでずっと食べていた1・2年目はあまり日本食が恋しくなることもなかったのだが、自炊をし始めると、慣れ親しんだ食材を手に入れたいという思いが強くなる。使う料理本とかアプリなども日本のものだということもあって、自然と日本食を作るのが当然のようになってくるのだ。この半年ほどで、大学に入ってからの一人暮らし人生の総計を上回る回数の自炊をしたおかげで、色々な情報も蓄積されてきたので、今回はオックスフォードの日本食事情について取り上げたい。結構色々と書くことがあるので、今回は自炊をするための食材に絞って書くことにする。次回は外食編になる予定。
オックスフォードの3つのアジア食材店
オックスフォードには、私の知る限り3つのアジア食材店がある。1つは中国系、1つは韓国系、もう1つは中国人と日本人の共同経営らしい。いずれの店にも日本食材が置いてある。
まずは鉄道駅前にあるLung Wah Chongから。この店は中国系で、店に入った途端になんだかよくわからない匂いがむわんと漂ってくる独特な雰囲気のお店。中華食材・韓国食材・日本食材・タイ食材など、幅広くカバーされていて、野菜コーナーもある。日本食は調味料なども豊富で、日本のカップラーメンの品揃えが多い印象がある。おそらく、3店の中で日本食材の品揃えは一番多いのでは?という気がする。接客にはむらがあり、だいたい毎回まず中国語で話しかけられるが、ここだけ違う国のようでそれもまた面白い。
お次は街の東部のマルチエスニックなCowleyという地域にある、Seoul Plaza。名前の通り、韓国系のお店だ。こちらはLung Wah Chongとは違い、新しめの店舗で、雑然とした感じはない。やはり韓国系の食材が豊富で、かつそちらの方が値段も安いため、調味料など、代替できるものは韓国の商品で代用するのも手だ。
3つ目は、去年できたばかりの、GG Oriental Snack Shackだ。バスターミナルの近くにある。店の看板には、「緑の島舗子」という謎の日本語(?)が書いてあって、国籍不明なのだが、話に聞くところによると、中国人と日本人の共同経営らしいが、定かではない。ここも日中韓の食材がまんべんなくカバーされているようだが、特筆すべきは、青果コーナーである。他の2店よりも生鮮野菜の品揃えが充実していて、ニラや白菜、大根、キノコ類などの野菜や、この前行ったときには梨なんかも置いていた。Lung Wah Chongにも白菜や大根はあるのだが、こちらの店の方が野菜が新鮮そうで安心して買える感じがする。
3店舗とも、日本食の品揃えや値段においては、そこまで大きな差はない。やはり国内で買うのに比べればかなり割高だが、背に腹は代えられないだろう。私は1・2年目はよくSeoul Plazaに行っていたが、近さの問題で最近は他の2つに行っている。Google mapによれば、この3つ以外にもまだアジア食材店はあるようだ。
ロンドン(とパリ)の日本食材専門店
なお、日本食の品揃えでいえば、残念ながらこれらの3店は、ロンドンのRice Wine Shopにはかなうべくもない。上記の店がいずれも日本食専門ではないのに対して、Rice Wine Shopは日本食専門の店で、品揃えも豊富だし、値段も格段に安い!ロンドンに行く機会があれば、ここに立ち寄って必要なものをまとめ買いしていくのがいいだろう。私も最近ここに行って、キューピーのごまドレッシングを買ってきた。ホームページを見たら、配送サービスもやっているようだ。
日本食専門ということで言えば、パリの京子食品も感動モノである。ここは2階建てで、値段は全体的に高めだが、日本酒の品揃えが驚くほど豊富だった。またこの近辺は日本食レストランが密集していて、どちらかというと中華系が中心のロンドンのソーホーよりも日本色が強いエリアになっていた。パリにこんなに大きな日本エリアがあるとは、驚き。
イギリススーパーにおけるアジア食材
イギリスも都市部を中心に随分と多文化社会になっているので、各国の食材に対する需要も高い。そのため、TescoやSainsbury'sといった一般のイギリススーパーにおいても、それなりに日本を含むアジア食材が手に入るようになっている。醤油や米(必ずしも日本米ではない)、豆腐、みりん、パン粉、パックのインスタントラーメンなどは、そのへんのスーパーで普通に入手できる。
アジア野菜も、いくつかのものが売られている。例えば、白菜はChinese Leafという名前で、青梗菜はPak Choiという名前で、椎茸はShiitakeというそのままの表記でTescoで売られており、私も買ったことがある。店頭では品揃えがない場合もあるが、TescoやSainsbury'sはネットで注文して配達してくれるサービスがあり、そちらには安定して在庫がある。

マーケットに行く
オックスフォードには、2つのマーケットがある。1つはCovered marketという、屋根付きの常設市場。ここは今では土産物屋やレストランなども入り、観光地にもなっていて、生鮮食品の市場という色は薄れているものの、 肉屋や魚屋、八百屋なども残っていて、スーパーでは手に入らないような品々が手に入ることもある。
もう1つはGlocester Green marketという、バスターミナルのすぐ近くの広場に、水曜から土曜まで開かれる、特設の市場だ。曜日ごとに出る店が入れ替わったりするのだが、たしか水曜には野菜の店なども出ていて、教育社会学の某先生もここで野菜を購入していると仰っていた。
肉や魚を手に入れる
アジア食材で、海外でなかなか手に入らないものの1つが、肉や魚である。正確に言えば、肉はいくらでも手に入るのだが、日本でよく食べるいわゆる「薄切り肉」がなかったり、レバーのような臓物系が売られていなかったりして、日本のレシピを再現できないことが多い。また、魚はサーモンやタラなどは普通に置いているものの、全体的にバラエティに乏しい。
最近発見したのは、先ほど紹介したTescoのネットスーパーで、レバーが買えることである。豚レバーも、鶏レバーも、ラムレバーもある。そしてあまり誰も食べないからか、値段も格安!なので私はここで買った豚レバーと、GG Oriental Snack Shackで買ったニラを使って、久しぶりにレバニラ炒めを作ってみた。


薄切り肉については、アジア系食材店に行くと、冷凍のものが売られていたりするが、新鮮さがないし、正直あまり信用できないのでまだ利用したことはない。しかし、ロンドンには、唯一日本式の薄切り肉をやってくれる、Willetts Butchersという肉屋が存在するということを最近知った。なんとオンラインの注文でイギリス全国に発送しているらしいので、今度利用してみたい。
魚については、あまり使っていないので正直わからないところも多いが、最近だと、Covered marketにある魚屋で、タコを売っているのを発見し、Lung Wah Chongで買ってきた大根と合わせて、早速たこ飯を作ってみた。

料理便利グッズ
最近の私の自炊生活のなかで、重宝している調理器具がある。「プレッシャーキングプロ」という炊飯器?圧力鍋?だ。もともとオックスフォードに越してきて、炊飯器を買おうと思っていたときに、日本の海外用炊飯器は高いから、Amazonで適当なものを買おうとして検索していると、多機能でご飯も炊ける圧力鍋的なものがあるということで、イギリスで買ってみたのだが、その後2年間は炊飯器としてしか使っていなかった。15分ほどでご飯が炊けるという早さは大きな魅力ではあるのだが、中の釜についたご飯が剥がれにくかったりで正直あまり快く思っていなかったのだが、先日一時帰国した際に、ショップジャパンの通販番組がこれを大々的に宣伝しているのを見かけてびっくりした。
イギリスで自分が何気なく買ったものが、日本に輸入されてありがたがられているのを見て、ちょっと苦笑してしまったのだが、これ本当にそんなに使えるのか?という疑問にかられ、逆に少し興味が出た。ショップジャパンは商売上手というか、専用のレシピ本まで作っていたので、これを帰国中に買って、イギリスに戻ってから料理に利用し始めると、なるほど思っていたよりこいつは使えるやつだということがわかった。
上のたこ飯もこれで作ったし、豚の角煮なんかも、材料を放り込んでスイッチを入れれば15分くらいでできてしまうので、あまり負担を感じずに料理ができる。炊飯器をこれから買うという人は、これにしてみると、色々使えていいかもしれない。まあ、普通の炊飯器でもほとんど同じ使い方ができるとは思うが・・・。

もう1つ、調理器具ではないが、冬にとても使えるのが、「鍋キューブ」である。これはいわゆる鍋の素をキューブ状に小さくしたもので、お湯に溶かして使うのだが、小さいだけにかさ張らずに日本から持って帰れる。これさえあれば、適当な食材を打ち込んでしまえばとても手軽に鍋が作れる。献立を考えるのがめんどくさいときに、例えば鶏肉と白菜だけでもあれば、簡単に一食分作ることができて重宝する。最近はこれが重症化して2日に一回ぐらい鍋を食べている。写真は鶏肉+白菜+エノキ+餅、全部イギリスで調達可能。

先人たちに感謝
こうした食材がイギリスにいても手に入るのは、ひとえに、何十年にもわたって移住してきた先人たちが、店を始め、流通ルートを確立し、農家に働きかけ、あるいはイギリスのスーパーに要望を出してきたおかげである。便利な時代に生まれてよかったと思うが、こうした先人たちへの感謝を忘れないようにしなければいけない。
次回は、阿鼻叫喚のWagamamaを始めとする、イギリスの日本食外食産業について考察する。


