紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

今学期の雑感(MT 2017)③:来学期の課題

前回の記事はこちら

ポルトガルからこんにちは。ポルトガルといえばイギリスよりも暖かいイメージで、実際気温的にはオックスフォードより5度以上高いのだが、それでもタイやインドネシアに行くのとはわけが違って、一応冬は冬である。日本でも北国の人はよく言うが、本当に寒い国では建物の防寒対策がしっかりしているので一旦家の中に入ってしまえば寒さは気にならない。トロントにいた時は、外がマイナス20度の世界なのに中ではみんな半袖半ズボンで過ごしていた。(カネディアンの中には外にも半ズボンで出て行く猛者もいたが、それはさすがに例外。)しかし、中途半端に寒い場所では、建物が寒さに耐えうるように設計されていないため、建物の中にいても底冷えのする寒さに襲われる。ポルトガルがまさにそれのようである。現に今宿泊先のairbnbの部屋でキーボードを叩く手は冷え切っている。過酷なブログ執筆環境を物ともしない筆者に拍手を頂きたい。

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リスボンの街を見下ろす

しかし「防寒対策」という言葉はおかしくないか。「◯◯対策」という言葉は、この「◯◯」に対して向き合うために何か手段を講じるということであり、例えば「害虫対策」は害虫が来ないように農薬を撒くとかいうことを指しており、「税金対策」は払う税金を出来るだけ最小限に留めるために何らかの手続をすることを意味している。しかし翻って「防寒対策」というのは、これに沿って考えれば「防寒」に対する対策、つまり人間どもがコートやらヒーターなどで武装してくるのに対抗してもっと強い北風を吹かせてやろうとか、窓を吹き飛ばしてやろうとかいうことになる。いや、待て。これは我々人間が寒さを軽減するための策ではなく、冬側の戦略ではないか!我々は騙されているのだ。

このままだとこの記事がどんどん「どうでもいい話」カテゴリに突き進んでいきそうなので、このへんで軌道修正して、今回の本題に入っていこう。今回は、これまでの2回の記事を踏まえて、今学期十分にできなかったこと、来学期やるべきことについて書いていきたい。

  • 研究関心の合う人を探す

今学期あまり研究活動が出来なかったのは2つ前の記事でも書いた通りだが、来学期からは自分の研究を本格化せねばならない。研究は基本的に指導教員とマンツーマンでやるというのがイギリス式だが、とはいっても、日常研究について色々と話すことのできる院生仲間や、指導教員以外の教員がいた方がより研究への多様な示唆が得られるし、人の研究からも参考にできることが多くなる。なので研究関心が会う人を見つけたいのだが、これがなかなかどうして簡単ではない。1つには自分の研究関心がIRのメインストリーム(安全保障研究とかIPEとか)とは離れている一方で、オックスフォードのIRの同期は大半がこうしたテーマを研究していること、もう1つは、あまりPolitics専攻の院生や、先輩、指導教員以外の教員と話をする機会がないことが原因としてある。東大にいた頃も周りと研究関心が合わずにかなりフラストレーションが溜まっていたのだが、この時はそもそも研究関心が合う人が研究科内にほぼいなかった。もちろん「研究関心」の範囲を広げればその網にかかる人はいるわけだが、その距離もそれなりに遠い割にそれでも人が少ない。今の研究科は、母集団も多いし、ある程度重なる人も多いのではないかという気がしている。幸い指導教員は面談のたびに「この人に会いに行け」という人を挙げてくれるので、教員の中では少しずつ広げていくことができそうだが、できるだけ情報通になって、時には研究科の枠を超えつつ、まずは学内で研究面での知り合いを増やしていくことが大切だと思われる。

  • ジョブマーケットを見据えた活動をする

先日学内の"Academic Job Seminar"なるものに出てきた。担当の教員がアカデミアの就職について概説するというもので、なかなか参考になったのでまた記事に書くかもしれないが、そこで「3・4年後にはジョブマーケットに出なければならない」という事実に改めて気付かされ、危機感を抱いた。現在査読中の論文が1つあるが、まだ英語での業績はないし、国際学会も審査中のものが1つあるもののまだ経験はなく、就職市場の仕組みについてもよく知らない。日本におけるそれについては少しずつ理解が深まってきてはいるのだが、海外のアカデミアについてはまるで土地勘がないのが現状である。しかし周りの院生を見てみると自分以上に知らない人も多いし、そもそもPh.Dを取っても全員がアカデミアに進む(を目指す)わけではないのがオックスフォードとアメリカのプログラムの違いである。正直に言ってオックスフォードの院生は少々のんびりし過ぎている感があり、それが良いところでもあるのだが、自分もついつい流されて「まあまだいいか」などと思ってしまいそうになる。しかし就職は最終的に人が何とかしてくれるようなものでもないので、自分で意識して早くから動き出さなくてはならない。アメリカのPh.Dはイギリスよりも長い時間をかけていて、就職に関する情報もより多く得ていると言われているから、彼らとの競争に負けないように自分も十分武装しなければならない。

具体的には、①学会情報をまとめて発表の予定を立てる、②博論以外にも論文を執筆して投稿する、③研究を通じて学内外にネットワークを作る、④将来自分がどの科目を教えられるようにするのか、方向性を定める、などの努力が必要になるだろうと思う。 

  • オックスフォード/イギリス/ヨーロッパをよりよく知る

今学期は生活も交友関係も、カレッジが中心になり、外に出る機会はあまり多くはなかった。 それ自体は悪いことではなく、異国の地で生活する上でまず自分の「ホーム」を確立する、つまり基盤を築くということは非常に重要であると思う。それがなければ生活が落ち着かないし、不安や寂しさといった感情に支配されやすくなる。今学期を通じてホームの確立には十分成功したと感じる。

しかし、基盤を形成する段階が過ぎると、今度はいつまでもそこだけに留まっているのではなく、積極的に外に出て行くことも必要になるだろう。自分のカレッジでずっと過ごすのではなく、学部のデスクでも研究し、街のレストランやパブを開拓し、他のカレッジも見学し、時には近郊の街に足を伸ばし、さらにイギリスの他の都市にも旅行し、ヨーロッパ各国も見て回る。コンフォートゾーンを出て色々なものを吸収することを心がけたい。

  • 運動をする

もう1つ今学期あまりやらなかったのは、運動や課外活動である。日本にいた頃は週に1・2回ジムで軽くだが筋トレをして、週1回スカッシュのレッスンに行っていた。しかしこちらに来てからは、荷物にスカッシュ・テニス用品が入らず道具を持ってこなかったこともあり、運動からは遠のいてしまっていた。また、博士課程になってサークルに力を入れるのもどうかと思ったのと、週何回練習があるというような拘束が煩わしく思われて、あまり課外活動にも力を入れなかった。

しかしやはり運動不足は身体的にも精神的にも良くないし、やろうと思えばジムくらいはすぐに行けることを考えると、行かなかったのは単なる怠慢だとも言える。年末の帰省の際にはスカッシュ・テニス用品も持ち帰る予定なので、来学期からはまた運動を再開していきたい。