紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

カタール日記 Week 2:世界一退屈な街?

カタールはドーハでの「フィールドワーク」生活も、もう3週間近くが経過しつつある。こちらでは、土日ではなく金土が週末なので、日曜日に大学に行くとついつい月曜日感覚になってしまう癖が抜けない。月曜日は火曜日感覚、火曜日は水曜日感覚・・・とずれていくので、ふとした瞬間に「あ、今日はアポイントメントがあったのに忘れてしまった!」と真っ青になった後に「いや、それは明日だった。」と気づくということを何度も経験しており、大変心臓に悪い(これを書きながらまた一回その勘違いが発生した)。

前回の記事では、新しい環境に満足している旨を書いた。

penguinist-efendi.hatenablog.com

2週目になっても生活は相変わらず快適だが、慣れてくると問題点も少しずつ見えてくる。真っ先に思い浮かぶのが、食事の単調さである。私が住んでいる大学のゲストハウスは、Education Cityという、カタール政府肝いりで作られた欧米の大学のブランチキャンパスが集まった地区の中にあるのだが、この地区は市内の中心部からは離れており、外食をするにもUberで20分ほど遠出をしなければいけないので、基本的に寮の食堂か、大学の食堂で食事をしている。寮の食堂はビュッフェ形式で、そう言うと聞こえは良いのだが、その内容が毎日ほとんど変わらない。米、温野菜、豆系の煮物、パン、パスタ、魚、チキン、ビーフと並びも決まっていて、マイナーチェンジはあってもほとんど同じ料理なのである。味自体は悪くないのだが、さすがに毎日食べていると飽きてくる。そのせいか、というか間違いなくそのせいで、現地の学生はあまり食べに来ず、広い食堂は毎日閑散としている。こういうところにも潤沢なはずの予算をもっと注ぎ込めばいいと思うのだが…

もう1つの問題は、娯楽の少なさだ。ドーハといえば「世界一退屈な街」というフレーズが「悲劇」の次くらいに連想されるという人も多いと思うが、その下馬評に間違いはなく、実際にドーハの娯楽といえば、ショッピングモールに行くというのが最大のもののようである。ドーハには数多くのショッピングモールが存在し、国民一人当たりショッピングモール数では世界トップクラスではないかと思われる。ところで、ドーハは世界一退屈な街である、という言説はいつどこで生まれたのだろう。オックスフォードの友達に英語でthe most boring cityと言ったら何で?と聞かれた。英語で"Doha  the most boring city"などと検索しても、あまり出てこない。日本だけなのだろうか?

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ヴェネツィアを模したショッピングモール。この運河は実際に舟で渡れるらしい。

その他で印象に残っているWeek 2の出来事といえば、インタビューのためにお会いしたカタール人の方の車(BMW)がとんでもなく豪華だったことだ。外観からして只者ではない車なのだが、内装も高級感に溢れていて、車に詳しくない私でもモノの違いが一目でわかるような車だった。高級車だと普通なのかどうか、中産階級の出身なのでわからないが、車が動き始めるとシートベルトが自動で調整される、という機能もついており、また凸凹の多いドーハの道路を走っていても衝撃がほとんど伝わらない。車に限らず、バッグであるとか、(私が見た範囲の)カタール人の人が所有しているものは、おしなべて高級で驚く。同じ豊かな産油国でも、例えばブルネイに行った時に見たものと湾岸を比べると、歴然とした差があるように思える。

もう1つの出来事は、なんといってもサッカー、アジアカップの決勝戦カタールvs.日本であったことだ。結果はご存知の通り、カタールが3-1で勝利したわけだが、私は市内中心部にはいなかったものの、大学の近くでのパブリックビューイングに行った。応援は大層なもので、老若男女、旗を振りながら熱心にカタールを応援していた。興味深いのは、選手もそうだが、観ている人々も、明らかにカタール人ではない人々が大いに盛り上がっていたことだ。「国民」「ネイション」とは何かを考えさせられる光景だった。

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サッカーのパブリックビューイング

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そういう日常生活における体験も、またフィールドワークの意義の1つなのだろう、という都合の良い解釈をしていたら、また一週間が過ぎた。