紅茶の味噌煮込み

東京駆け出し教員日記

きのこたけのこ論争という結果の分かり切った議論について

日本に帰って来ると食べたいものが沢山ある。寿司はその筆頭で、海外でもSushiが食べられるとは言ってもそれはSushiであって寿司ではない(両者は似て非なるものである)し、ラーメンもまた海外で食べられるものの大半はRamenに過ぎない。イギリスの有名和食チェーンWagamamaに至っては、あれはただの高温の水に浮かんだ細長い小麦粉の塊である。やはり帰ってきたら本物を食べたい。

この前本郷三丁目駅から東大に向かって歩いていたら、本郷通り沿いにある「おかしのまちおか」が目に入った。そういえば日本のお菓子も久しく食べていないな、と気づいて入り、何かめぼしいものはないかと探し始めたら、懐かしいものがあった。たけのこの里である。明治の大ヒット商品であり、タケノコの形をしたクッキーをチョコレートでコーティングした、あれである。子供の頃から好きだった。

https://www.meiji.co.jp/sweets/chocolate/kinotake/products/takenokonosato/assets/img/thumb.jpghttps://www.meiji.co.jp/sweets/chocolate/kinotake/products/takenokonosato/assets/img/thumb.jpg

ふと隣に目をやると、なんだかいびつな形をした、「たけのこの里」の類似商品があった。きのこの山と言うらしい。知らない子だ。しかし世間ではどうやら「きのこの山」は「たけのこの里」と同じくらい人気があるらしく、「きのこの山たけのこの里 国民総選挙」などというわけのわからない催しまで開催されているらしい。

日本に民主主義が根付いていることを再確認することができるこの企画は、「きのこの山」と「たけのこの里」のどちらが良いかを投票によって決める、というものである。なんとナンセンスな企画だろうか!

好みは人それぞれだから?どっちも美味しいから?いやいや違う、たけのこの里」の方が美味いに決まっているからだ。あのサクサク感、クッキーとチョコレートの高次元の融合、円錐状の美しいフォルム…!それに比べて「きのこの山」はどうだろう、クッキー部分はカサカサで、クッキーとチョコレートは分離し、安定しない形状のせいで自立できない。

きのこの山」を食べている途中で、ふと調べたいことがあることに気づいたらどうすればいいというのだろうか?すぐに調べ物をしたい。今すぐ知りたい。でも急いで食べたくない。おざなりになんかせず、チョコレートとクッキーと真摯に向き合いたい。「きのこの山」はこうしたお客様からのご要望に応えることができない。形がまっすぐでなく、チョコ部分を接地させずに置くことができないからだ。大切な本や机が溶けた「きのこの山」のチョコレートによって汚れてしまったというご経験をお持ちの方は多いだろう。被害者の会も設立予定だと聞く。

その点「たけのこの里」ってすげえよな。最後までチョコたっぷり立てられるもん。チョコが机に接することない安定した形状のおかげで、我々は心置きなく調べ物に集中することができるのである。身分の安定しない大学院生には「安定」の重要さが身にしみて分かっているのだ。

これだけでも「たけのこの里」の優位性は明らかであるが、学問的誠実さのためにも、以下のサイトに上がっている中からいくつか選んで、きのこ派からの予想される反論に予め対処しておきたい。

  • 反論①:たけのこはきのこより手が汚れる

きのこは茎部分がクッキー、傘部分がチョコレートと分かれているのでつまみやすいが、たけのこはチョコレートで覆われているのでつまみにくいという意見。
しかし、たけのこは全面チョコレートではない。下の方にはクッキーだけの部分があるのだ。きのこ派の皆さんはたけのこのチョコでない部分をつまめないほど不器用なのだろうか?大抵の人はたけのこだって手を汚さずにつかめるはずだ。それにそもそも、チョコが溶けるほどたけのこを放置しておくのは先方に対して失礼であると、知り合いのマナー講師が言っていた。

  • 反論②:チョコレートとクッキーを別々に食べられるからきのこの方が良い

このような意見もあった。ズバリと言っている割にはあまりズバッとしていない。

私が「きのこの山」を推す理由は、ズバリ3つの味を楽しむことができるからです。1つ目はチョコ部分のみ、2つ目はスナック部分のみ、3つ目はチョコとスナック同時。 

確かにきのこの場合は、チョコ部分とクッキー部分が分離できるので、2つの味を別々に楽しめるという「メリット」を感じる人は多いだろう。しかし、ここで素朴な疑問が生まれる。別々に食べるなら、なぜそもそも1つの商品にする必要があるのだろうか?チョコレートとクッキーを買ってきて、別々に食べればいいではないか。上の意見に対しては、「3つの味」を味わいたいなら、1つ目にチョコレートを食べ、2つ目にクッキーを食べ、3つ目に「たけのこの里」を食べれば問題解決だということを教えてあげたい。 
そもそも、Wikipedia情報では、「きのこの山」の開発経緯自体が結構適当なものであるようだ。

明治製菓の社員が、アポロチョコレートにビスケットを付けた姿がキノコに似ている事を発見し、コンセプトが生まれ商品が開発された。

じゃあアポロチョコレートとビスケットを食べてはどうだろうか!

  • 反論③:きのこの方がチョコレートの量が多い

チョコレート含有量をきのこ支持の理由にする人もいるようである。

チョコレートのボリューム感がよい。甘いもの食べてるぞ、と感じる。たけのこは薄くチョコが塗ってあるので、ボリュームを感じない。

しかし、私ならチョコレートが欲しければチョコレートを買うだろう。

 

とまあ、こういうわけで「たけのこの里」の大勝利は論を俟たないのである。ところで、マクドナルドの略称はマックではなくマクドが正しい。マックだけだと誰の子孫か分からないからだ。